スマホの販売サイクルは半年から1年に
しかしなぜ、ドコモは従来力を入れていたスマホの端末ではなく、それと直接関係するわけではない、暮らしの充実に関するサービスを中心に据えた発表会を実施するに至ったのだろうか。その理由を考えていくと、携帯電話市場が大きな曲がり角を迎えていることが見えてくる。
今回、ドコモは新機種の数を大幅に減らしただけでなく、端末に関して新たな方針を打ち出している。それは、従来半年毎に投入してきた端末のサイクルを、1年に伸ばすということ。従来、各メーカーがハイエンドモデルやミドルクラスのモデルを夏と冬の両商戦期に合わせて投入していた。しかし、今後はハイエンドモデルは夏だけ、ミドルクラスは冬だけといったように端末投入の回数を減らし、それら端末を半年でモデルチェンジせず、1年を通して販売する方針を打ち出したのである。
同じ端末を年間を通して販売するということは、端末メーカーに対して非常に大きな影響を与えると同時に、新しい端末の投入数が減少し、ユーザーにとっては選択肢が少なくなることにもつながってくる。にもかかわらず、こうした方針転換を実施したのには、スマホの進化停滞と市場の飽和が考えられる。
米国時間の5月19日に、グーグルは開発者向けイベント「Google I/O」で、Androidの次世代版「Android N」に関する発表を実施したが、その内容を見ると、大きな変化となるのは仮想現実(VR)用のプラットフォーム「Daydream」が新たに提供されることであり、スマホとして見た場合の進化には乏しい印象を受けた。グーグルやアップルといったスマホのOSを開発する企業自体、最近ではスマホ単体での進化に限界を感じており、VRのように周辺機器を活用するなどして進化の方向性を模索しているのが現状なのだ。
すでに多くの人たちがスマホを手にしており、しかもその進化が停滞している現状、数を増やしてバリエーションを強化しても販売拡大には結びつかない。しかも4月には、総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を適用したことで、実質0円など端末を大幅に値引いて消費を刺激することも難しくなってしまった。端末数の減少とサイクルの長期化には、そうした市場の変化が大きく影響しているのだ。