米国で注目される企業に、アマゾンがある。日本をはじめとする各国に進出しており、流通業界を非常に素早いスピードで変革していく存在として、恐れられてもいる。
直近では、米国の高級スーパーチェーン、ホールフーズ・マーケットを買収した。その意味合いは、「アマゾンが、全米450カ所の高いブランド価値を持ち、それぞれ収益を上げている、冷蔵庫付き食料品流通拠点を手に入れた」と解釈することができる。
オンラインの書店として出発したアマゾンは、電化製品、アパレルなどへとその守備範囲を広げ、ついには生鮮品まで配送してくれるようになった。また、人工知能を活用したスマートスピーカー「Amazon Echo」は、業界を牽引する存在となった。
加えて、ドローン配送「Prime Air」、無人食料品店「Amazon Go」など、物流やショッピングと最新のテクノロジーの組み合わせを次々に打ち出していくアマゾンは、テクノロジー業界だけでなく、流通の世界からも注目を集めている。
Prime Dayを成功させた
そんなアマゾンには、「Prime」という会員制のサービスがある。特に米国では、小さな包装ひとつに10ドル以上かかることも少なくない配送料が無料になることから、アマゾンで年間6~10点の買い物をするなら、年会費99ドルのPrimeメンバーシップに入ったほうがいいというコスト感覚がある。
調査によると、Amazon Primeの会員は8500万人を突破したという。2015年6月からの2年間で倍増しており、16年6月から35%増加した。
一会員当たりの平均消費額は年間1300ドルで、非会員の700ドルの倍近い数字となっている。前述のように、会員からすれば、どんなに小さな金額でも年に6〜10点以上の買い物で回収できるコストと解釈しているが、結果としてアマゾンでの消費に大きく貢献していることになる。
そんなPrimeメンバー向けのオンラインセールイベント「Prime Day」が、今年も米国東部時間7月10日午後9時から30時間にわたって開催された。3回目となるPrime Dayでは、通常の利益の4倍を計上したとも見積もられている。
米国では「第2のブラックフライデーになる」として、夏のシーズンの消費の山をアマゾンがつくり出しているとの分析もある。ブラックフライデーとは、11月末の感謝祭の翌日に行われる大セールのことで、いわゆるホリデーシーズンの消費が盛り上がる初日ともいわれている。
そうした習慣に匹敵する消費喚起をアマゾンがつくり出していることは、同社の影響力を知る良い材料といえるだろう。
日本の物流を揺るがす問題と米国での対処
アマゾンでのオンラインショッピングの需要の高まりに比例して拡大しているのが、配送の問題だ。日本ではヤマト運輸が当日配送を縮小するなど、流通の現場からの悲鳴の声が大きくなってきた。
そもそもの前提として、日本の配送サービスは、米国のそれとは比べものにならないほど品質が高い。言い換えれば、米国に引っ越してきて、常に配送サービスの質の低さに怒りを覚えることが多かった。