配送料金が高い割には、配送には3日以上の日数を要する。また、不在の場合は「ドアタグ」といわれる不在票がエントランスに貼り付けてあるのだが、その指示がうまく伝わらなかったりすることも多い。また、エントランスに荷物を置いていくこともあるが、冷蔵や冷凍で運ばれてきた生鮮品も同様の扱いだ。
そして誤配もよく起きる。その際にはアマゾンに問い合わせれば、改めて品物を送ってくれるが、誤配はある程度織り込み済み、ということなのだろう。筆者も昨年は2回ほど、届かなくて問い合わせたことがあった。
米国でも基本的には宅配物は受取人の署名とともに配達完了となるのは日本と同じだ。しかしオンラインショッピングの流通量が増えて、安全な場所に置く、もしくは持ち帰る、というオペレーションに変化しているのだ。
日本の配送業者のサービスは素晴らしい。しかしその仕組みを維持できるほどアマゾンをはじめとするオンラインショッピングの流通量はなまやさしくない、より厳しくなる、そんな将来像を示唆しているようだ。
バークレーでは独自配送が増えた
アマゾンも配送に関して、対策に乗り出している。
筆者が住むカリフォルニア州サンフランシスコ郊外の街、バークレーには、アマゾンの物流拠点が設置され、同社のステッカーが貼られた配送トラックが街を巡回するようになった。つまり、独自の配送システムを導入したということだ。これまではOnTracやUSPS(米国の郵便サービス)といった業者の配送が多く、現在でも併用されている。
街の中に物流拠点が設置されたことで起きた変化は、その拠点に在庫があるものに関しては、1日で配送されてくるようになった点だ。Amazon Prime会員であっても、2~3日が最速だったこれまでと比較しても、大幅な配送時間の短縮である。
バークレーの拠点にどんな在庫があるかを理解するほどオーダーしていないが、日用品などの小物は早く、比較的大きなものは今まで通りの時間がかかる。そんな差異を見いだすことができる。
これまでの大規模な拠点を中心とした配送から、小規模な地域の配送システムへの移行は、アマゾンが現在行っている流通の改善のひとつの方策といえる。ホールフーズ・マーケット買収についても、そうしたマイクロセル型の物流システムを裏付けることになるし、ドローン配送についても、さすがに100kmも空を飛ばして配送するわけにはいかないわけだ。
しかし、アマゾンは配送関連で年間50億ドル規模の赤字を出している。これは米国大手の物流企業の投資額に匹敵しており、独自の配送網を構築していく投資を行っていることが、決算からも、実際のアマゾンの物流の変化からもうかがうことができる。
当面は米国を中心として、独自の配送網を築いていくことになると考えられるが、一度モデルができあがってしまえば、日本やその他の国々へと展開していくことになる。まだ時間がかかるが、アマゾンがフェデックスやUPSのような国際的物流網を手に入れる日が訪れると予測できる。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)