それでは、Proに長所はないか? というと、そういうわけではない。パソコンと同じCPUを搭載したおかげで、処理能力もパソコン並みだし、OSにWindows 8 Proを搭載し、パソコンのWindows 8のプログラムが動作する。他のタブレットとの決定的な違いはここにある。Windowsパソコンの仕事環境を、そのままタブレットに移行することができるのだ。また、タイプカバー(キーボードケース)は普通のノートPC並みのキータッチを実現しているので十分に仕事に使える。
そして、日本市場にだけ投入される256GBのSSDストレージのおかげで。より多くのデータを持ち運ぶことができ、仕事でも実用的に使える。そのため、Surface Proのメインターゲットはビジネスユーザーとなるだろう。ビジネスユーザーにすれば、重いノートパソコンよりも軽量なタブレットのほうが持ち歩きやすい。Surface Proのタイプカバーを加えた重量は、軽量なノートPC並みなのだ。
そして、パソコンとして使えるのに加え、必要があればMetroインターフェースでタッチ操作で使えるアプリを使ったり、人にデータを見せるのもやりやすい。まさにビジネスマーケットにはうってつけと言える。現在、Windowsノートパソコンを使っている人には、Surface Proは魅力的だろう。Surface Proはビジネス向けに圧倒的な強みを持っている。
●タブレット市場の勢力図はどう変わる?
このSurface Proの登場で、タブレット市場の勢力図はどのように変わるだろうか?
まず、最大勢力であるiPadは、キーボードケースを組み合わせて仕事に使っている人も多いと思うが、こうしたユーザー層には、処理速度や動作するプログラムのおかげで、Surface Proが魅力的に見えることだろう。とはいえ、この層はあくまでiPadユーザーの一部で、多くのユーザーはメールやSNSを気軽に楽しんだり、情報検索したりするのが大半だろう。彼らはSurface ProではなくSurface RTでカバーするのがマイクロソフトの戦略だろう。
それでは、Androidタブレットはどうだろうか?
Androidは7インチのNexus 7がヒットしているが、10インチサイズのタブレットではヒット作があまりなく、Surface Proと争うタマがない。ソニーモバイルのXperia Zなどは比較的成功しているが、その方向性は主にAV用途などで、趣味的に使われるものなので、ビジネス志向のSurface Proのライバルにはなりにくいだろう。
総合すると、Surface Proはビジネスのためにタブレットを使いたいユーザー、そして、さらにウルトラブックなどの軽量なWindowsノートPCの市場に食い込むことが予想できる。特に10インチ級タブレットのビジネス向け市場では、大きなシェアを取る可能性があるのではないだろうか?
(文=一条真人/フリーライター)