チームの生産性を高める方法については、いろいろな主張があります。ビジョンを語る強いリーダーシップが必要だという意見もあれば、組織にあまり階層を設けず、メンバーが全員参加でビジョンを語り合うべきだ、という意見もあります。仕事とプライベートの付き合いは分けたほうがよい、と言う人もいれば、家族ぐるみの付き合いをする組織のほうが生産性が高いという主張もあります。
このようにまったく正反対の意見が、それなりの理屈(納得性)をもって語られることは、よく見られることです。その理由は、比較するための実験が難しいからです。
これは私が専門にしているビジネスに関係する領域だけでなく、社会科学的な分野全般にいえることです。まったく同じ仕事を、同じ環境のもとで、同じメンバーで同時並行で進めることはできませんし、期間が異なれば環境が変わりますし、メンバーも経験することで学びます。
しかし最近、このチームの生産性を高めるという難しい問題に対して、グーグル社が統計的なアプローチで解を求める取り組みを行った結果が注目されています。今回はニューヨークタイムスマガジンに掲載された記事を参考にしながら、この調査のプロセスと、結果としてわかったことに私の解釈を加えて皆さんにお伝えします。
グーグル社がチームの生産性を高める取り組みを行った理由は、冒頭で紹介したような説のなかには、ある程度正しいものもあることが経験的にはわかっているのですが、誰も客観的なデータをもって検証したことがなかったから、というものです。
同社は2012年に「アリストテレス」という名前のプロジェクトを立ち上げました。その目的は、完璧なチームをつくるのに必要な方法を、統計的な手法を使って見つけ出すことでした。そのために、社内の統計学者、組織心理学者、社会学者、エンジニアなどを集めて、のべ5万人以上の社員が参加する何百ものプロジェクトを調べることにしました。
さて、このプロジェクトがチームの生産性を高める方法を探るために、最初に着目したのは、チームメンバーの性格や行動、バックグラウンドと、その構成でした。例えば次のような視点で観察を行いました。
・同じような興味を持っている人たちが集まったチームは生産性が高いのか。
・チームメンバーはどれくらいの頻度で、会社の外で食事をするのか。
・男女のバランスはチームの生産性に影響があるのか。