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トイアンナ「私は言いたい」

就活生、会社選びで20時帰宅を絶対条件に…新入社員、仕事を放り出して帰宅は常識

トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事
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就活生、会社選びで20時帰宅を絶対条件に…新入社員、仕事を放り出して帰宅は常識の画像1「Thinkstock」より

 今年の就職活動中の学生は、20時帰宅を絶対条件にしています。私は就活生を支援して7年、現在はオンライン個人塾の就活講座を運営しています。約130名の生徒を指導しており、さらにそれ以上の学生にOB・OG訪問を通じてコーチングを行う日々です。そこから判明している今年の就活生トレンドを本稿ではご紹介いたします。

ワーク・ライフ・バランスの重要度が上がった

 2019年卒の就活生においては、電通の過労自殺事件を受けワーク・ライフ・バランスの重要性が高まっています。これだけなら驚くことはありませんが、興味深いのは学生の定義する「激務」も変化している点です。

 たとえば、ある就活生は私にこう語りました。

「体力はあるほうなので、激務耐性は強いと思います。毎日22時まで働くことも厭いません。ですので、コンサルや広告代理店が第一志望です」

 残念ながら、コンサルティング・ファームや広告代理店の多くは24時帰宅が「定時」であり、プロジェクトが燃えれば午前3時帰宅、翌日7時出社などということもあります。学生だから現実を知らないのは当たり前だ、とも言い切れません。リーマン・ショック直後の不景気を経験した就活生は、激務の実態をより正確に把握していました。

 学生のマインドが変化した理由としては、「普通の勤務時間」が総合職でも18~20時退社と想定されるようになった点が挙げられます。プレミアムフライデーの導入やノー残業デーなどの取り組みは、実施率は限られるものの意識変化は起こせているものと思われます。「普通の勤務時間」が短くなった結果、就活生が想定する「激務」の水準も22時頃帰宅に繰り下がったものと考えられます。

現役社会人と就活生の「常識」は食い違う

 しかし、採用担当者の「常識」はそこまで変化していません。その結果、採用後の苦言を聞くことも増えました。いわく「今年の新卒はすごい。激務業界と知ってうちに来ておきながら、仕事を途中で放り出して21時に退社していった」というものです。筆者としてはごく当然の労働態度かと思いますが、従来の「若手は限界まで働いて成長すべし」と考える社員との軋轢は避けられないでしょう。

 15年以前に大学を卒業した人材にとって、ワーク・ライフ・バランスとは「なるべく効率的に仕事を終え、自宅へ帰る」ことを指しました。あくまで仕事が優先順位の上にあり、家庭との両立に向けて努力することを意味したのです。しかし16年卒以降のワーク・ライフ・バランスは「仕事がたとえ終わっていなくても、プライベートを優先する」ほうへ変化しています。ライフとワークの順位逆転が起きている事実は、これから先輩・上司となる方にとって無視できないものとなるでしょう。「なぜ仕事が終わっていないのに帰るんだ」と言っても、社員を説得できなくなるからです。

「弊社へお越しいただく立場」に変わった就活生

 これは決して今時の若者はけしからん、という話ではありません。少子化が進み、学生の人口が減っているなか、企業は「学生に応募していただく」弱い立場になっているのです。さらに就活生で一生同じ職場にいるつもりの方は半数を切っています。すでに採用したからといって「これからは言うことを聞いてもらうぞ」などと考えていては、すぐに転職されてしまうのがオチです。新卒採用は長く在籍してもらうことで初めて自社に利益を還元できる育成システムですから、これでは採用の収支が赤字となってしまいます。

 これからしばらくは、採用の売り手市場が続くとみられています。そのなかで企業の研修・社風も柔軟に対応していかなければ、新卒のみならず優秀な中途社員も自社から零れ落ちていくでしょう。「働き方改革」を絵に描いた餅にしている企業に、警鐘が鳴り響いています。
(トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事)

トイアンナ/ライター

トイアンナ/ライター

外資系企業にてマーケターとして勤め、独立。累計5,000人以上の人生相談を受けた経験を受け、恋愛とキャリアを中心に執筆している。これまでにWebを中心に100媒体以上で連載を持つ。書籍に『モテたいわけではないのだが』『確実内定』『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本』など。現在は、公式サイト「恋愛塾」で恋愛関連記事を掲載中。
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Twitter:@10anj10

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