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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

英会話スクールやジムが「無駄なコース」に加入させる必殺テクニック

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
英会話スクールやジムが「無駄なコース」に加入させる必殺テクニックの画像1「Thinkstock」より

 うっかり説得に乗ってしまい、あとで後悔する。誰にも経験があるだろう。私自身、若い頃にそんな経験を何度もしているので、巧みな説得術に乗せられて後悔している人の話を聞くと他人事ではない。

 そこで今回は、なぜ安易な説得に乗ってしまうのか、その心理メカニズムについて考えてみたい。そこを踏まえておけば、説得に対する抵抗力が高まり、身を守ることができるはずだ。

 Aさんは数カ月前に英会話教室の勧誘を受け、その場で申し込みをした。申し込んだ時点では、「よし、これを機にがんばってみるか」と前向きな気持ちだったのだが、なぜか次第に気が重くなってきた。家に帰り、落ち着いて考えてみると、英会話を習おうなどといった思いは勧誘されるまではまったくなく、そもそも英会話をやる必要性がないのだ。でも、せっかく申し込んだのだからと通い始めたものの、すぐに後悔し、結局ほとんど通わずにやめてしまい、払い込んだ授業料が無駄になったという。

 日頃の運動不足が気になっていたBさんは、つい先月、スポーツジムのチラシを見て、軽い気持ちで見学に行った。良い感じだったら週1~2回くらい通おうかと思っていたのだが、説明を受けているうちに、つい勢いで毎日使えるコースを申し込んでしまった。だが、仕事帰りにスポーツジムに寄る時間がなかなか取れず、先月も今月も週1回、がんばっても2回しか通えていない。

 Bさんは、初めから週1~2回と思っていたのに、なぜ毎日使えるコースを申し込んでしまったのだろう、しかも当初に想定していたより高い料金だし、その大半が無駄になっているし、ほんとうに自己嫌悪だという。

 このようにうっかり説得に乗ってしまって後悔するというのは、誰もが経験しているはずだ。それが学びや趣味ならまだよいが、ビジネス上の契約だったりすると大きな痛手を被りかねない。そのような事態を防ぐためにも、まずは身近な事例をもとに、つい説得に乗ってしまう心理学的背景についてみておきたい。

そこにはどんな心理トリックがあるのか?

 なぜ英会話などにまったく興味のなかったAさんが、英会話教室に通う申し込みをしてしまったのか。何か自己啓発的なことをしなければといった向上心がなければ、そのような申し込みをすることはない。それはそうなのだが、うっかり申し込んでしまった背景には、必殺の心理トリックがある。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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