それによると、11年のスマートハウス関連市場規模(見込み)は世界市場が2.7兆円、国内市場が1.2兆円。これが20年には世界市場が11年比4.4倍増の11.9兆円、国内市場が同2.9倍増の3.5兆円に急成長すると予測している。
停電も怖くない家
スマートハウスとは、住宅用エネルギー管理システム「HEMS(home energy management System)」により、家電、太陽光発電装置、蓄電池などを一元管理し、自家発電と電力の最適量使用ができる住宅のこと。広義にはエコ住宅(省エネ住宅)になる。
CO2排出量削減を目的にしたエコ住宅は、住宅メーカーが従来から「ゼロエミッションハウス」「ロハスの家」などの概念で販売に力を入れてきた。しかし「地球に優しく健康に良いのもわかるが値段が高い」(一般消費者)など実利性の低さもあり、単独市場として注目されることはほとんどなかった。
それが注目されるようになったきっかけが、昨年の東日本大震災だった。
原発稼働停止を理由とする電力不足キャンペーンを背景に、住宅単体で「創エネ、蓄エネ、省エネ」が実現できる実利的なスマートハウスに関心が高まり、住宅業界外の多種多様な事業者が、スマートハウス関連市場へ参入、あるいは参入を目論んでいる。異業種参入組の中には、家電量販最大手・ヤマダ電機なども加わっており、住宅メーカーにとっては大きな脅威になっている。
こうした状況から、住宅業界も苦戦中の「エコ住宅」から「停電も怖くない家・スマートハウス」へ向けて大きく舵を切り、昨年後半から各社は、スマートハウスの発売計画やスマートシティ開発計画を相次いで前倒し発表するなど、にわかにスマートハウス関連市場が立ち上がる様相を見せている。住宅業界関係者が、「これでやっとエコ住宅販売促進の決定打が出た」とはやるのもうなづける。
100社以上の新規参入で、市場は大混乱
ところが「スマートハウス元年」と位置づけられ、その9年後には「3.5兆円の市場規模」と景気の良い花火が打ち上げられたのにもかかわらず、一向に普及の見通しが立たないのだ。
現在、住宅メーカーを中心に発売や分譲が計画されている、スマートハウスやスマートシティは、現状では「いずれも住宅設備や家電は、市場流通品と互換性がない特注品の塊のような家。だから、価格も標準家屋モデルで約1億円と、既存のエコ住宅よりずっと高い」(電機メーカー関係者)。これでは売れない。