一方、スマートハウスが機能するためには、その三大要素である
・創エネ(太陽光発電)
・蓄エネ(リチウム電池)
・省エネ(家電・住宅設備)
の連携が欠かせない。この連携を支える中核となるのが、住宅用エネルギー管理システムであるHEMSなのだが、肝心のHEMS規格が震災前のわが国では標準化前の状態だった。
その状態の中で、震災後は住宅、不動産、家電、通信、電子部品、自動車と多種多様な業界から、100社を超える事業者が一挙にスマートハウス事業に進出、HEMS利用のさまざまなアイデアでしのぎを削っている。
「見える化」と「電力消費制御」
各社のアイデアを見ると、その基本は2つに大別できる。
1つはHEMSを利用した電力消費量の「見える化」。分電盤に計測器をつけ、宅内LANで家電などの電力消費データを収集、それをサーバに記録してケータイやパソコンで閲覧できるようにする。
もう1つはHEMSを利用した「電力消費制御」。リチウム電池を導入し、電力消費が少ない夜間にリチウム電池へ充電した電力を、昼間に使うことで、自動的にピークシフトを行うもの。また、停電時などは、太陽光発電や燃料電池からの電力供給に自動的に切り換わる。
この2つを基本機能に、各社がさまざまな「HEMSサービス」を打ち出しているため、震災前までHEMS規格標準化の中心として地道な努力を続けてきた電機メーカーの、想定外のサービスが続出している。中には標準化と逆行するようなサービスで、HEMS利用の差別化を図ろうとするケースさえ出てきている。大変な混乱ぶりだ。
突然の標準規格決定
そんな騒ぎの中で、HEMSの標準規格が突然決まった。
2月、経産省「スマートハウス標準化検討会」が発表した、「エコーネットライト」がそれだ。だが、驚くことにこの規格は、15年も前の97年設立の「エコーネットコンソーシアム」で策定されていた。
この規格に準拠した家電も発売されている。02年に東芝、翌年に松下電器(現パナソニック)が発売し、インターネットに接続できる「ネット家電」として話題になった。
しかし、その時は一定の省エネ効果しかなく、消費者が高いお金を払ってわざわざ買うほどの魅力がなかったため、まったく売れず、話題倒れに終わってしまった。その後、エコーネットライトはお蔵入り同然になっていた。
それが、震災後のスマートハウスブームで急遽蔵から引っ張り出され、昨年8月からたった3回の「スマートハウス標準化検討会」会合で、エコーネットライト対応の家電、スマートメーター、太陽電池など、約80種類の規格やインターフェースが決定されたというわけだ。
HEMSのこうした過程を振り返ると、なんとも場当たり的な対処に思えてならない。国の計画性がまったく感じられない。だから「HEMSの標準化が正式に決まったといっても、この先はどうなるか、やってみなければわからない」と不安を見せる住宅メーカー関係者も少なくない。
本格発売は2年先?
というのは、これから約80種類の機器ごとに、エコーネットライト接続検証をするわけだが、同検討会が規格決定と同時に示した今後の工程表では、検証が終了するのは、早くても来年度中になっているからだ。さらに「エコーネットライトと国際標準との連携調整」もしなければならないが、国際交渉なので、これもいつ決着するのかわからない。
つまり、早くても2年先にならないと、スマートハウスは実質的に発売できないわけだ。スマートハウスをすでに発売している住宅メーカーもあるが、これらは「独自規格のHEMSを使っているケースが大半。広告用モデルハウス程度でしかない」(エネルギー関係者)ようだ。
もう1つ問題がある。今回決まった規格は国内標準であり、これが国際標準と整合するかどうかは、今後の交渉次第。行方がまったくわからないことだ。
米国では「SEP(Smart Energy Profile)2.0 」、欧州では「KONNEX」の策定作業が進んでおり、これらが国際標準になる可能性が高いといわれている。