●アジアを中心として急速に人気が高まる
ファブレットが特に人気を獲得しているのは、韓国や中国などアジア圏が中心だ。実際、KDDIの新モデルとして登場した「Xperia Z Ultra」も、ファブレットに対するニーズの高い中国などでは半年前に投入された。また韓国を訪れると、男性だけでなく女性でも6インチクラスのファブレットを使っている光景を目にすることが多く、幅広い層に定着していることがわかる。
なぜアジアでファブレットが人気を得たのかといえば、1つは大画面に対するニーズが高いことが挙げられる。スマホでゲームやWebブラウジングなど、さまざまなアプリやコンテンツを快適に利用するなら画面は大きいほうがよい。そうしたことから、より大きなサイズの画面を求めてファブレットを使うようになったと見られる。
そしてもう1つ、より大きな要因となっているのが、スマホを片手で操作することに対するこだわりが薄いことだ。フィーチャーフォン全盛時代に、iモードなどのモバイルインターネットサービスが大きく盛り上がらなかったアジア各国では、携帯電話からではなくパソコンからインターネットの利用が広がっている。そのため文字入力においても、両手でキーを打つインターフェースが広まるなど、モバイルデバイスを両手で操作することに馴染みやすかったと考えられる。
加えて、フィーチャーフォン時代からヘッドフォンマイクやBluetoothヘッドセットが広まっている国も多かったため、スマホを持たずに通話することにも慣れがあった。そうした背景から、画面サイズの大きなファブレットのメリットを受け入れ、持ちづらさというデメリットにもあまり違和感を抱かなかったといえる。
●日本におけるファブレット普及のカギ
一方、日本ではスマホに対し高い性能を求める一方で、大きな画面を積極的には必要としていないように見える。これには、画面サイズの小さいアップルのiPhoneシリーズが人気を博していることも強く影響しているが、片手での利用に対するこだわりが非常に強いことも、より大きな要因となっている。
日本では、フィーチャーフォン時代に片手で文字を入力する文化がしっかり根付いたのに加え、スマホでも「フリック入力」など片手での文字入力を意識した仕組みが広く普及している。また音声通話に関しても、以前よりイヤホンマイクやヘッドセットでの通話に抵抗感を抱く人が多かったことから、スマホになっても端末を耳に当てて通話するのが一般的だ。
こうしたことから日本では、片手での扱いやすさに劣るファブレットは「サイズが大きすぎる」という声が少なからず聞こえ、容易に広がりにくい状況であることは確かだ。片手操作に対する支持は、日本ならではの文化背景や生活習慣も大きく影響しており、そう簡単に覆るものではないだろう。
では、日本でファブレットが広まるには何が求められるかというと、やはり日本人が5インチクラスのディスプレイのスマホに慣れるというのが、大きな条件になってくるだろう。あくまで仮定に過ぎないが、例えば日本で人気の高いiPhoneが、もし次世代のモデルで5インチを超える大画面を採用してきたならば、日本でも急速に大画面に対するニーズが高まる可能性があり、そうなればファブレットに対する見方も大きく変わってくると考えられる。
日本でもファブレットが広く普及するのか、それともスマホとタブレットの間に埋没してしまうのか。ファブレットの供給が増えてくるであろう今年は、その普及の大きな分岐点になるといえそうだ。
(文=佐野正弘/ITライター)