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「ダイヤモンド」vs.「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(11月第3週)

サムスン、モノマネ経営の限界~新規事業が大ゴケ、深刻な日本企業からの技術漏洩の実態

サムスン、モノマネ経営の限界~新規事業が大ゴケ、深刻な日本企業からの技術漏洩の実態の画像1サムスン電子本社(「Wikipedia」より/Roakr)
 「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/11月16日号)は『サムスン 日本を追いつめた“二番手商法”の限界』という特集を組んでいる。

 「全体の売り上げは30兆円。サムスンは韓国最大の財閥企業グループだ。その中核を成すサムスン電子は、前を行くライバル企業を徹底的にキャッチアップすることで、急成長を遂げてきた。日本の家電メーカーのみならず、あのアップルですらその追撃をかわせず、世界各地でシェア逆転を許している。しかし今、逆に追われる立場になったことで、サムスンの戦略には大きな転機が訪れている。強欲な韓流企業が直面する『限界』に迫った」という内容だ。

 「ダイヤモンドの記者と会ったら、解雇の可能性もあると言われている」とは多くのサムスン関係者。今回は、徹底した情報管理をするサムスンをも徹底取材した意欲的な特集だ。

●“二番手商法”でのし上がってきたサムスン

 まず、サムスンといえば、日本企業のお家芸ともてはやされていた半導体や液晶パネル、テレビなど家電製品を文字通り分解・解析し、要素技術を明らかにする「リバース・エンジニアリング」という“二番手商法”を徹底し、世界1位の座を奪ってきた。これに対しアップルのスティーブ・ジョブズ氏は、「コピーキャット」と蔑視していた。

 「日本よりも基礎技術やデザインで勝っている」と2010年のラスベガスで行われた世界最大の家電見本市で、創業家2代目の李健熙(イ・ゴンヒ)会長は高らかに勝利宣言した。確かに多くの分野で本家の日本の技術はしゃぶり尽くされ、追い抜かれた。

 頂点に立ったサムスンには、3つの大きな課題が待ち受ける。スマホ市場の飽和状態、新規事業の前途多難、そして、世襲問題だ。

 まずは、過去最高益をたたき出すスマートフォン事業。その端末「ギャラクシー」はサムスン電子の営業利益の7割を占めるまでになり、アメリカのアップルをも追い落とす勢いだ。しかし、スマホ市場はすでに飽和状態。この先の成長が課題だ。しかも、これまでのモノマネとは異なり、自らが開発・投資を進める。新規事業開発の領域に乗り出さなければいけない立場になった。

 しかし、前途は多難。サムスンが満を持して放った腕時計型の未来端末ギャラクシー・ギアは、「携帯電話を持たずに、メッセージやLINEができる」と、アップルの後追いメーカーというイメージを払拭するために世界中のイベントで大々的に宣伝してきたが、大手量販店の返品率が30%を超えるという大ゴケをしてしまった(特集コラム『返品率3割超で“大ゴケ”か スマートウォッチの試練』)。

●新規事業を生み出すことはできるか?

 また、秘かに自動車事業に再参入をもくろんでいる。日本の慶応義塾大学発のベンチャー、シムドライブの電気自動車開発プロジェクトに参加。サムスン電子の役員も足を運ぶほど並々ならぬ関心を寄せている。かつて、李会長が政府の反対を押し切って設立したサムスン自動車は、わずか5年で経営破綻、00年にフランス・ルノーに買収された過去があり、自動車関連事業は新事業の本命と見られている。10年にぶち上げた「5大新事業」でもLED、太陽電池、バイオ医薬品、医療機器とともに自動車用電池が挙げられている。

 障害となるのは、「極端な短期成果主義」だ。年1回のサムスンの業績評価では、「1度でも平均以下を取ると昇進の芽がついえ、下手をするとクビ」。このため、「1年で成果の出ないプロジェクトや研究に手を出すのは困難」なのだという(特集Part2『吸い尽くされた日の丸技術 “キャッチアップ殺法”の曲がり角』)。

 実はサムスンの短期的な成功は、日本の技術者をヘッドハンティングすることで実現してきた。特集記事『独占公開! サムスンが呑み込んだ日本の技術」では、サムスンの日本人技術者が出願したエレクトロニクス関連特許を割り出し、技術者たちの出身企業から「どの出身企業のどの専門分野の日本人が、サムスンにとって価値のある特許を出してきたのか」をランキング化(トップ30)している。

 1位はサンヨー出身・専門分野は有機EL、2位はキヤノン出身・専門分野はデジタルカメラ、3位はサンヨー・専門分野は液晶・表示装置……と電機メーカーが多く名を連ね、三洋電機も合わせると、パナソニック関連出身者が6人と最も多い。次に多いのがキヤノン、NEC、コニカミノルタで3人ずつだ。一方、技術者の専門分野は、デジタルカメラが6人と最多だ。

 これまでも、斜陽化した日本の電機メーカーから日本人技術者が引き抜かれているという話はあったが、現実に数字になって表れた格好だ。さらに、「サムスンへ転職する日本人の中には、“お土産”をどっさり持って韓国へ渡っている人も」いるという。日本企業にとっては秘密情報漏洩も深刻なのだ。日本企業のリスクコントロールの甘さが指摘されている。

●世襲はうまくいくのか

 そして、サムスン最大の問題は世襲だ。李会長は71歳、過去にはがんを患い体調も不安視される中、後継者と目されるのは会長の長男・在鎔(ジェヨン)氏だ。12年12月に副会長に就任したものの、その能力は未知数。過去には00年前後のITバブルでの「eサムスン」という一連の事業で2000億円超の損失を出したこともあるという。「普通の企業であれば十分にトップとして通用するだろう」というのが彼をよく知る人々の評価だが、サムスンの経営は韓国経済に直結しているだけに、プレッシャーが肩に重くのしかかる(特集Part3『メディアも黙殺する 巨大財閥のタブー』)。

 なお、李会長が保有するサムスン電子など財閥の株式を相続するには、莫大な相続税が発生する。その額は、一説には1~2兆円ともいわれる。相続税対策で、グループの分離・分割という事態も起こるかもしれない。過去最高益の裏側で、懸念要因も多いのだ。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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