家電量販店ではヤマダ電機が7月に参入し、大手がほぼ出揃った。ヤマダ電機は中国・ファーウェイ製のLTE(次世代高速通信)に対応したスマホと、電話番号などの情報を記録したSIMカードをセットした商品を売り出した。利用料金は端末代金込みで月額3047円(税込、以下同)だ。
家電量販店では4月にビックカメラ、5月にエディオン、7月にヨドバシカメラが参入した。月額の利用料金はビックカメラが2732円、エディオンが2434円、ヨドバシカメラが2618円だ。
格安スマホブームに火をつけたイオンは、値段を引き下げて防戦に出た。4月に発売した格安スマホは3218円の料金設定だったが、7月発売の第2弾は通信料と端末代金込みで2138円。
ネット通販大手の米アマゾン・ドットコムの日本法人は8月、格安スマホに参入。韓国・LG電子が開発したLTE対応のスマホで利用料金は3218円。契約後3年目からは端末代金を除いた1684円となる。アマゾンの参入で、格安スマホの市場は一気に拡大する可能性がある。
各社の格安スマホは、携帯電話会社から回線を借りるMVNO(仮想移動体通信業者)と提携し、端末とSIMカードをセットで販売する方式で、利用料金を月額2000~3000円前後に抑えている。端末を除いても月額7000~8000円かかる携帯電話大手に比べて、格段に安い。
格安スマホがブームになり、需要がシニア層にも広がりを見せたことで、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、KDDI(au)の大手携帯電話3社は警戒感を強めている。
●MVNOの日本通信
リサーチ会社、MM総研の調べによると、MVNOは4強といえる状態になっている。NTTコミュニケーションズ、インターネットイニシアティブ(IIJ)、日本通信、ビッグローブである。NTT系のIIJは、財務省の大物事務次官だった勝栄二郎氏が社長に就任したことが話題となった。MVNOの先駆けといえるのは日本通信で、イオンと提携して格安スマホブームを演出した。
格安スマホの追い風に乗り、日本通信株の7月7日時点での売買代金は1632億円。東証1部を含む全市場で1位となった。同日の株価は上場来の最高値の1268円をつけ、1月14日の安値89円から、わずか半年で14倍に暴騰したことになる。しかしその後、株価は暴落し、9月17日の終値は634円。仕手株の色彩が極めて強い。同社の2014年4~6月期決算の売上高は前年同期比24%増の13億円と増収だったが、純利益は87%減の900万円にとどまった。格安スマホへの先行投資(6500万円)がかさんで大幅な減益となったためだ。しかし、格安SIMは順調に伸びており、15年3月期の売上高は33%増の62億円、純利益は28%増の11億円を見込んでいる。
ちなみに日本通信の三田聖二社長は、役員報酬1億円以上のランキング常連である。14年3月期の役員報酬は1億8100万円で、前年(1億5100万円)より3000万円増えた。東京商工リサーチの調べでは全国91位。三井不動産、三井物産、日立製作所といった大企業のトップより高い報酬を得ている。05年の株式上場以来、無配が続く小規模企業にもかかわらず、社長の報酬は大企業のトップと遜色がない。格安スマホで脚光を浴びた日本通信は、なかなかの異色企業といえるだろう。
格安スマホで先鞭をつけたイオンは9月5日、新製品イオンスマホLTEを発売した。4月の参入から3製品目で、初めてLTEを採用するとともに、高速で利用できるデータ通信量も2倍にした。端末は中国の家電大手TCL集団製を採用した。料金は端末代込みで3218円。ターゲットとしては、スマホになじんでいる20~30代のユーザーを狙う。
NTT系のNTTレゾナントも8月にLTE対応の激安スマホを売り出し、関西電力系のケイ・オプティコムは月3ギガバイトまで高速通信回線を使えるプランを設けるなど、LTEに対応した格安スマホのサービスが広がっている。イオンはこうした流れに対応して新製品を出したかたちだ。
群雄割拠の様相を呈してきた格安スマホ市場だが、最終的に生き残る企業はどこなのか、今後の流れから目が離せない。
(文=編集部)