また、株価が下がったといってもまだ今年3月の水準であり、1年前より7割も高い。ただちに中国経済が崩壊して世界の金融不安を招くということはないだろう。リーマンショックほどのインパクトはない。
とはいえ、経済規模が大きいだけに、短期間に4兆ドルの時価総額を失ったという数字のインパクトは大きく、中国政府がコントロールに失敗すると、当然日本にも大きな影響が出る。
長期的な視点では、中国に「株式市場によって投資が循環する仕組み」の確立が遠のいた影響は大きい。リーマンショック以後、中国は政府の投資によって高成長を無理やり維持していた。それも債務の膨張により持続困難になってきたので、株式市場を通じて民間の資金を投資に向けようとした。中国の成長エンジンの一つと期待していただけに、火が消えてしまったのは痛い。従って、中国の成長する需要を当てにしていた中国内外のプレイヤーたちは、弱気にならざるを得ないだろう。そういう意味でも、日本への影響はギリシャ問題より大きい。
ギリシャ問題の世界経済への影響
実はギリシャの債務問題は、世界中が騒ぐほどのものではない。ユーロ圏のGDPに占めるギリシャの割合は2%程度、年間政府予算は約1.3兆円と日本の1%程度にすぎない。7月末にギリシャが払えなくなり大騒ぎされた債権額が2100億円。一時見込まれていた新国立競技場の建設費(2520億円)より少ない。
ギリシャが実質債務不履行(デフォルト)になったとしても、周辺のポルトガル、スペイン、イタリアへの飛び火は限定的だ。ギリシャ問題が表面化した数年前はリスクがあったが、ECB(欧州中央銀行)はユーロ防衛の方法として新国債買い切りプログラム(OMT)や債券購入プログラムなど、ギリシャ問題の飛び火防止策をすでに準備している。また、欧州の銀行が保有するギリシャ資産は、ピーク時から80%減少している。
EUは、ギリシャの周囲にしっかりと城壁を築き終わっているのである。
ギリシャ問題の答え
ギリシャ、EU、そして世界経済にとって最善の選択肢は、ギリシャが債務免除を受けユーロ統一通貨から離脱した上で、EUにとどまるというものだ。
一般的に国家が破産状態になった時は、デフォルトして通貨を切り下げ「一から出直す」のが最も手っ取り早くて効果的だ。アイスランドは自国通貨の管理ができたので、08年の通貨危機から回復した。IMFは、ギリシャが今も自国通貨ドラクマを使っていてそれを切り下げていれば不況を回避できた可能性がある、と認めている。