現在の中国株安による日本経済への影響は、「ギリシャ危機以上・リーマンショック未満」と筆者はみる。6月15日に中国の株式相場が急落したことは、ギリシャ危機と比べるとメディアで報道される量は少ないが、日本経済への影響は大きい。一時は時価総額にして約400兆円を失ったのだから、あなどってはいけない。とはいえ、2008年のリーマンショックに比べると、グローバル金融への影響はそれほど大きくはないだろう。
こうした大局観を持って、「踊れど決まらぬ欧州の会議」や動きの激しい中国株式相場の推移を、一喜一憂せずに見守りたい。
中国、荒っぽい経済運営
もともと中国のここ5年ほどの経済見通しは、次のようなものだろう。年8%成長して米国にGDPベースで追いつくことはあり得ないし、リーマンショック並みの世界的金融不安につながる経済崩壊も起こらない。今後5年間で経済成長率は、これまでの年8%から4%前後に落ち着いていくだろう。大きな混乱なくそこに到達する「ソフトランディング」ができれば、習近平政権の経済政策は上出来といえよう。
とはいえ、先進国からみると、ソフトランディングとは呼びにくい荒っぽいやり方になるだろう。中国の経済政策運営は、先進国のような中央銀行の金融政策によって微妙に調整しながら進める洗練された方法ではなく、素朴で直接的で力強い、言い換えるとやや野蛮な方法で行われる。
先進国では、旅客機のように水平尾翼の昇降舵の角度をわずかに変えることによって、機体の高度を微妙にコントロールしているのに対して、中国は複数のロケットエンジンの点火とストップだけで高度を調整しているようなものだ。激しく上下動しながら進むため、乗客は骨折や打ち身、ねんざが当たり前で、ずいぶん乗り心地も悪い。命あって着陸できれば、ソフトランディング成功といえる。
今回の中国株安も、この1年弱でロケットの点火とストップが繰り返された結果だった。政府は、借金がかさんで投資を増やせないので、個人投資エンジンに火をつけて株価を上げた。それがあまりに急騰したので、少しエンジンに水をかけた。そうすると、エンジンが止まって高度が急降下したので、慌ててPKO(株価維持対策)エンジンにも点火して高度を保った。当面は上下動が続くが、すぐに「ハードランディング」する状況でもないといったところだろう。
リーマンショックほど大きな影響はない
もともと中国経済における株式の重要性は、大きくない。先進国において時価総額は、対GDP比で100%を超えているが、中国のそれは3分の1程度だ。中国企業の資金調達で株式市場からのものはわずか4.2%で、株式投資家は全人口の6.4%にすぎない。上海総合指数は1年間で1.5倍に上昇したが、ほとんど消費拡大につながらなかった。従って株価が下落しても消費への影響は限定的だろう。