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東芝、恐怖の底なし巨額賠償支払い地獄か 影落とす28年前の日米“東芝事件”

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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アメリカのクラスアクションは、なぜ怖いのか

 クラスアクション集団訴訟と訳され、日本にも集団訴訟制度は存在するが、アメリカの制度は裁判所から「一部で集団全体を代表するクラスアクション」と認められた場合、日本以上に被告は不利になる。訴訟社会のアメリカでは、クラスアクションの参加者を募ると被害の程度が不明確な人も交えて参加者がふくれあがる傾向がある。しかも、複数起こされた訴訟の中で誰か1人が勝訴すると、クラスアクションに参加している被害者も、参加していない被害者も、全員が被告から救済を受けられるルールになっている。

 今回の東芝のケースでいえば、クラスアクションの訴訟参加者が仮に100人だとしても、その中の1人でも勝訴したら、損害賠償の支払い対象は100人にとどまらず、「東芝株、東芝ADRで損失を被った人」は全員が東芝から救済を受けられ、損害賠償額が巨額になる恐れがある。

 そのため、クラスアクションの被告は賠償支払額をなんとか低く抑えるために原告との和解で解決を図るケースがほとんど。それでも和解金はかなりの高額を覚悟しなければならず、アメリカでは訴訟の和解金で被告企業の最終利益が赤字になることもよくある。

実燃費が広告よりも悪いために約140億円を支払ったホンダ

 日本企業ではタカタが製造したエアバッグに欠陥が見つかりアメリカ、カナダでクラスアクションを起こされているが、本田技研工業(ホンダ)は広告をめぐって次のようなクラスアクションを起こされ、2012年に総額で約140億円の和解金を支払っている。

「シビック」のハイブリッド車の広告に掲載された燃費の数字よりも、購入者が実際に走ってガソリン代を支払った燃費のほうが悪かった。どこのメーカーの自動車でもよくある話だが、購入者は「予想外の出費を強いられた」と主張してカリフォルニア州サンディエゴ郡地裁に訴え、クラスアクションと認められた。ホンダは結局、購入車の年式に応じて1人当たり100~200ドルの和解金を支払い、さらに、今後ホンダの新車を購入する際には最高で1500ドルの値引きを受けられるという権利までプレゼントした。

 1人最高200ドルといっても、和解金の支払い対象者が03~09年モデルのシビックハイブリッドの購入者全員に及ぶというのがクラスアクションの怖いところだ。その数は、全米で約20万人。裁判などまったく知らなかった人も含めて全員がホンダから和解金を受け取り、その総額は1億7000万ドル(当時のレートで約140億円)にも上った。140億円は12年3月期のホンダの当期利益2114億円の6.6%を占める。エアバッグと違って安全性とは無関係な、広告の片隅に小さく載った燃費の数字が、ホンダに大きな損失をもたらしたのである。

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