それでもホンダは、「私たちはホンダ車の所有者と良好な関係を維持したいと望んでおり、裁判所がこの和解案を承認したことを喜んでいる」という神妙な談話を出している。
東芝に対するイメージは決して良くない
東芝がアメリカで、株価下落による損失をめぐってクラスアクションを起こされることは、もはや不可避な情勢だが、アメリカの法制度にはもう一つ「陪審員」という厄介な存在がある。クラスアクションを認定するのは裁判官だが、陪審裁判になって被告に不利な評決を出されるのを恐れ、被告が高額の和解金をのんで裁判を終わらせるケースは多い。公害問題のように、陪審員になる国民に良いイメージを持たれていない場合は、なおさらそうである。
東芝は1999年にアメリカで、「フロッピーディスクのデータが壊れた」というパソコン部品の欠陥による損害をめぐって訴訟を起こされたことがあるが、テキサス州連邦裁判所がクラスアクションと認定する前に東芝側はクラスアクションを認めて原告と和解し、総額1100億円(訴訟費用を含む)の高額な和解金を支払って裁判を終わらせている。なぜ和解を急いだかというと、原告にタバコ会社相手の健康被害のクラスアクションで巨額の和解金を勝ち取った敏腕弁護士がついていたことと、テキサス州連邦裁判所の陪審員が大企業に不利な評決を連発していて、陪審裁判になって賠償金額がより高額になるのを恐れたためだった。
今回の原告側についているローゼン法律事務所も、大企業相手のクラスアクションで数々の戦果を挙げているが、陪審員になるアメリカ国民の東芝に対するイメージも、必ずしも良いとはいえない。というのは、87年に東芝グループの東芝機械がココム違反事件を起こしているからだ。
この事件は、東芝機械がソ連(当時)に輸出した工作機械によってソ連海軍の潜水艦の性能が向上し、冷戦の相手のアメリカに軍事上の潜在的な危険を及ぼしたとして「対共産圏輸出統制委員会(ココム)協定」違反に問われたもの。アメリカ国防省が日本政府に調査要請を行ったことが87年3月に明るみに出て、外国為替及び外国貿易法違反で東芝機械幹部2人が逮捕され、法人の東芝機械とともに起訴された。同年7月、当時会長の佐波正一氏、社長の渡里杉一郎氏が辞任している。