果たしてソニーは、本当に復活できるのか――。
株主と経営陣の溝
株主総会で平井一夫社長は、中期経営計画(2012-14年度)の目標が未達となったことを冒頭で陳謝-。次いでパソコン事業の撤退、テレビ事業の分社化、本社・販売会社のリストラなど一連の構造改革の成果に触れ、「モバイル・コミュニケーション分野(スマートフォン事業)以外の課題はすべて解決した」と述べ、16年3月期の純損益が3期ぶりに黒字(1400億円)に転換するとの業績予想に自信を示した。
その上で2月18日に発表した新しい中期経営計画(15-17年度)の基本方針に掲げた「収益性重視の経営、各事業部門の自立と株主視点重視の経営、各事業の位置付けの明確化」の中身を説明。「前中計のテーマは『変革』だったが、新中計のテーマは『利益創出と成長に向けた投資』になる」と、「平井改革」が新ステージに移ったことを強調した。
要するに「従来のエレクトロニクス事業に依存したビジネスモデルから、電子部品、ゲーム、映画・音楽、金融(生保)などで収益を稼ぐ『脱エレキ』のビジネスモデルに転換する」(証券アナリスト)というものだった。
平井氏のこの説明に対して、総会に出席した「ソニーファン」といわれる株主の多くから「ソニーの固有技術を、なぜ利益創出につなげようとしないのか」と、不満を示す声が相次いだ。また、経営陣への質問では、同社OB株主が平井社長に過去10年間の敗因をただす次のような場面もあった。
「私はかつてソニーの中間管理職だった。今の惨状は、まさに今昔の感がする。この10年間でソニーは、なぜここまで凋落したのか? 平井社長の説明を聞きたい」
これに対して平井氏は「私たちも社内で、この問題を議論してきた。コスト、市場環境の変化など、さまざまな要因がある。だが、確実にいえるのは、海外の競合メーカーは為替の面でのコスト競争優位を背景に、積極的な価格で商品を提供してきた。その中で当社も価格とスペックで競争をしようとしすぎた。それが私の分析だ」と従来の持論を披露。続けて、「本来のソニーは手触りや意外性などがスペックに付加価値をもたらす、感性の高い商品を提供してきた。今後も、そうした感性価値のある商品を提供してゆく必要がある」と付け加えた。