8月11日から13日にかけて、中国人民銀行は人民元レートの基準値を合計4.5%も切り下げた。経済大国である中国の“奇襲”に、世界市場は動揺した。
特に、中国経済への依存度が高い韓国では、人民元切り下げ後、CDSプレミアム(クレジット・デフォルト・スワッププレミアム:債務不履行になるリスク)が2年3カ月ぶりに最高値を更新した。さらに、株価とウォンの下落も目立った。
同期間、アジア主要16カ国で韓国よりCDSプレミアムの増加率が高かったのは、タイとマレーシアだけである。韓国株式市場では、中国内需市場の冷え込みが予想され、外国人投資家による韓国企業の売りが続いた。
10日から13日の間に売り出された株価総額は、約6671億ウォンだ。特に、LG生活健康(マイナス529億ウォン)、アモーレパシフィック(マイナス449億ウォン)、SKテレコム(マイナス437億ウォン)、SKハイニックス(マイナス415億ウォン)、ホテル新羅(マイナス357億ウォン)などの売りが目立った。
今後、人民元切り下げは、韓国経済にどのような影響を与えるのだろうか。嶺南大学経済金融学部のイ・ヒョス教授は、嶺南日報に寄せたコラムの中で次のように指摘している。
「人民元とウォンの価値がシンクロしてウォン安になれば、輸出は増加するが、株価は下落する可能性が高いでしょう。外国人がウォン建て資産を売却して、韓国から撤退しようとするからです。米国が考えているとされる、今年中の金利引き上げとタイミングが重なれば、外国資本の離脱はさらに加速します。そうなると、企業の資産価値下落が起こり、資本市場からの資本調達が困難になります。結果的に、デフォルトの危険が高まります」
さらに、イ教授は「ウォンが人民元にシンクロしない場合も、危機的な状況が起こり得る」と指摘する。以下のような内容だ。
「ウォン高が維持されれば、韓国の輸出競争力に赤信号が点灯します。同時に、韓国政府が目標に掲げている雇用創出と経済回復が困難になるでしょう。中国は、韓国最大の観光顧客であり、輸出市場です。人民元の価値が下落すれば、中国観光客の減少で観光収入が減少します。中国側も輸入を減らすので、対中国輸出が減少するでしょう。また、特筆すべきは近年、中国と韓国の技術格差が縮まっていることです。米国、欧州など中国以外の海外市場でも、中国との価格競争に押されて韓国の輸出が大きく縮む危険性があります」
韓国の経済的打撃は避けられない
イ教授の話を総合すると、人民元切り下げによる韓国の経済的打撃は避けられないということになる。
今年、韓国は経済的に難しい局面を幾度となく経験している。そのひとつは、日本人の記憶にも新しい「MERS(中東呼吸器症候群)騒動」だろう。韓国人記者が語る。
「韓国では、ここ数年、慢性的な不況が続いていましたが、MERSの影響でさらに消費が落ち込みました。韓国人が外出を控えたことに加え、中国人観光客の客足も遠のいたことで、市場で露店を営む人たちなどは『廃業に追い込まれそうだ』と嘆いています。人民元切り下げの影響で、追い打ちを受けないことを願うばかりです」
MERSが流行した期間、中国人観光客が激減したため、韓国国内の免税店の売上高は前年比マイナス70%にまで落ち込んだという。同様に、ホテル業界や百貨店業界も大幅な収益減に悩まされている。
各業界関係者は、今回の人民元切り下げに対して「泣きっ面に蜂」と頭を抱えているようだ。中には「中国人観光客に依存する構造から抜け出す必要がある」と語る免税店関係者もいる。
2015年も残すところ約4カ月だが、中国依存を高めている韓国経済にとっては、もう少し試練の時が続きそうである。
(取材・文=河鐘基)