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片田珠美「精神科女医のたわごと」

闘病中のKEIKOへ離婚提案の小室哲哉、良心が欠如したゲミュートローゼの可能性

文=片田珠美/精神科医

強烈な自己愛と「天才だから」という認識

「大悪人」が偉大なアーティストに多いのは、次の2つの理由によると私は思う。

1)強烈な自己愛

2)「天才だから」という認識

 まず、「強烈な自己愛の持ち主でなければ、偉大なアーティストにはなれない」というのが私の持論なのだが、自己愛が強いと「自分は特別な人間だから、普通の人には許されないことでもやっていい」という特権意識を抱きやすい。そのため、約束を守らず、簡単に人を裏切る。また、他人を「道具」としかみなさず、自分自身の目的を達成するために他人を利用するが、利用価値がなくなったと感じたら平気で捨てる。

 また、自他ともに「天才だから」という認識があることが、本人の非情さに拍車をかける。本人も「自分は天才だから少々のことは許される」と思い込むし、周囲も世間も「あの人は天才だから仕方がない」と許すからだ。

 だから、1990年代の小室さんには、「天才だから」ということで許されたことが多々あったにちがいない。だが、現在の小室さんは、どうだろうか。ご本人が昨年の引退会見で言及なさったように、「才能の枯渇」が誰の目にも明らかなので、現在の小室さんを周囲や世間が許すのかどうか、疑問である。

 だが、そんなことは小室さん自身にとってはどうでもいいはずだ。他人を傷つけようが、悲しませようが一切気にせず、「屍(しかばね)を超えて進む鋼鉄のごとき人」こそ「ゲミュートローゼ」の真骨頂なのだから。

(文=片田珠美/精神科医)

【参考文献】 

三枝成彰『大作曲家たちの履歴書(下)』(中公文庫)2009年

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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