この出版不況の時代に、大阪でなんと政治家が書いた書籍が売れているという。しかも著者は民主党の尾立源幸参院議員。大阪で民主党といえば、「第4の政党」といわれるほどの不人気だ。今年の参院選で改選となる尾立氏も、心中穏やかではないはず。事実、民主党大阪府連代表を務める尾立氏は、幹事長を務める樽床伸二元衆院議員と、「民主党」という看板では戦えないとして、2月2日に岡田克也代表に新党結成とすみやかな代表選実施を求める要望書を提出した。
このように、選挙に向けての危機感は深刻だが、2月に刊行された尾立氏の著書『元財務大臣政務官が語る! アベノミクスの正体』(水王舎)の売れ行きは好調で、すでに増刷もかかっている。
尾立氏は1963年生れ。慶應義塾大学を卒業後、アーサー・アンダーセンに勤務し、税理士、公認会計士、行政書士の資格を持つ。菅第一次・第二次改造内閣では、財務大臣政務官を務めている。得意分野はもちろん金融と財政。安倍内閣が柱とする分野だ。
その尾立氏が同書で述べるのは、アベノミクスによっては国民は豊かになることはなく、その安全保障政策で国民が危険に曝されるということだ。そしてそれは現実化しつつある。
たとえばアベノミクスの効果でよく語られる「トリクルダウン効果」。いわゆるシャンパンタワー効果というもので、シャンパンタワーの上から注がれるシャンパンは順次流れ落ちて、下のグラスにも注がれるというものだ。確かに高度経済成長期にはその効果があり、人々の生活は豊かになった。
だが現在ではそのシャンパンは、上層部のグラスが吸い取ってしまい、下部のグラスにまで落ちてこない。大企業が利益を留保し、下請けや家計にいき渡らないのだ。
さらに将来への不安もある。2014年10月に、安倍内閣は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針を見直し、それまで60%を国内債券で安定的に運用していたものを、株式運用の割合を拡大。目的は株価上昇のためだが、株価は下落することもある。
実際に今年に入ってからの株価の動きは不安定で、2月12日には1万5000円を割っている。運用損は14兆円に上るといわれている。実際に2月15日の衆院予算委員会で、安倍晋三首相は「想定の利益が出ないなら、年金支給額の減額もあり得る」と答弁しているのだ。