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なぜダイヤモンド・プリンセスに寄付された崎陽軒シウマイ弁当4千食は乗客に提供されなかった?

文=編集部
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横浜に停泊するダイヤモンド・プリンセス(ロイター/アフロ)

 乗客が新型コロナウイルスに感染し、横浜市の大黒ふ頭に接岸中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。長引く船内での隔離生活で披露する乗客を元気づけようとした善意の支援が、思わぬ物議を呼んでいる。横浜市の崎陽軒が12日、乗客や船内で働く検疫官や医療従事者、自衛官に対して寄付しようとした「シウマイ弁当」4000食が提供されなかったのだ。

乗客、スタッフに届けられなかったシウマイ弁当

 日刊スポーツインターネット版は13日、『崎陽軒クルーズ船に寄付のシウマイ弁当乗客に届かず』と題する記事を公表した。報道によると、崎陽軒は乗客、スタッフを励まそうと、シウマイ弁当の寄付を企画。横浜市港湾局への相談を経て、港湾局と船の詰め込みを調整する代理店に交渉。12日の昼食向けに船に搬入することが決まった。崎陽軒は指定の時間通りに大黒ふ頭にシウマイ弁当4000食を輸送。同日午前11時までに船への搬入が終了したという。しかし、弁当は届かなかった。同記事を引用する。

「同日の昼食、夕食は通常通りの船側が用意したメニューで、加えて支援企業が寄付した飲料、カップラーメンなどが提供されたという。複数の乗客は、ツイッターで『まだ届いていない』『シウマイ弁当は、どこに消えた?』『せめて(船内で支援活動をする)自衛隊やスタッフの方々に届いていれば』などと発信した。一部の乗客は12日夜に『明日の朝か、昼にでも出るのかな?』と期待を寄せていたが、12日に寄付されたシウマイ弁当の消費期限は同日午後4時だったため、消費期限を過ぎての提供は困難だ。シウマイ弁当は1食860円(税込み)で、提供された4000食は344万円相当だった」

提供・配布できるだけのマンパワーが不足か

 一体、何が起こっていたのか。地方紙記者は次のように話す。

「なぜこのようなことが起こったのか複数の要因があると思います。一番考えられるのは搬入されるシウマイ弁当を配膳するだけのマンパワーが船内のスタッフに残っていなかったということ。接岸から約1週間、スタッフらは未曽有の事態への対応に疲れ果てています。3食の食材搬入のルーティンに加え、新しい仕事を追加する余地がなかったということが考えられます。

 2つ目に、寄付された弁当で食中毒などの健康障害が起こった際、誰が責任を取ればよいのか不透明なことが考えられます。乗客の持ち込みの食品と違い、『船に寄付され、船が乗客に提供する弁当』となってしまうからです。すでに体調を崩している乗客がこれを食べて、万が一にでもトラブルが起これば責任問題に発展します。

 3つ目に、同船の乗客は日本人だけはありません。宗教上、シウマイ弁当の豚肉を食べられない乗客やスタッフもいます。そのうえで配る人と配らない人を分ける作業は非常に煩雑ですし、ほしいのに配られなかった人がいた場合、トラブルになります。横浜を代表するメニューで多くの人に好まれるおいしいお弁当ですが、全員に配るという計画はもともと難しかったのかもしれません」

震災被災地に届けられた大量の「筋子おにぎり」

 東日本大震災の際、津波被災地では似たような事態が発生していた。被災地に食料がないというニュースを見た企業や個人が、大量の食糧を津波で半壊した役場庁舎にトラックで搬入したのだ。保存のきく菓子や乾パンなどは時間をかけて被災者に配布できたが、困るのが保存のきかないものだった。

 岩手県関係者は次のように8年11カ月前を振り返る。

「筋子やたらこなどの生ものを使ったおにぎりが、三陸沿岸自治体の災害対策本部に届けられたことがありました。支援物資の分配を担当する自治体職員は連日徹夜で、足元がふらついていました。津波に飲まれた職員も多く、ただでさえ人員も不足していました。

 なんとか人員を工面して配布していきましたが、稼働可能な自動車も少なく、結局、その日のうちにすべての避難所に届けることはできませんでした。津波被害にあった鮭の養殖場を見た被災者もいて、『もう鮭も筋子も見たくない』といってお怒りになって、手に取らない方もいらっしゃいました。それでも善意で届けられたものですから翌日以降、数日かけて配布できなかったおにぎりを全職員で食べました。腹痛になっても、下痢になっても寝込むわけにはいきませんでした」

 通常では簡単にできることができないのが非常時だ。支援の気持ちは大切だが、被災者や被害者の個別の要望や要請に反射的に応えていると、支援を受ける側、支援をする側、双方にとって望まない結果になることもある。政府なり自治体なり、災害をコントロールする機関が乗客のニーズを調整し、要望を受け取る仕組みを構築する必要があるだろう。

(文=編集部)

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