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ただし、こうした苛烈な人生を余儀なくされた光厳天皇ではあったが、それでも「主上(=天皇)としての務め」を果たさなければという使命を強く意識し、幽閉が解かれたのち、光厳天皇は後醍醐天皇をはじめこの戦乱と混乱のうちに没した南朝の皇族たちを弔う慰霊の行脚に出かけるのだ。これまで敵対し幽閉を課し、困難を突きつけた人びとへの哀悼と鎮魂の旅。まさに恩讐の彼方への旅を光厳天皇は行う。天皇の本務は「祈り」――。まさにそれを体現した天皇であった。
時代に合わせた天皇像
光厳天皇のほかにも、富士山噴火に陸奥一帯での大地震(貞観大地震)、関東でも大地震といった天変地異の多発に退位・出家し、峻厳な修行に臨んだ清和天皇など、時代に翻弄された天皇を紹介しているのが、『日本人が知らない「天皇と生前退位」』(八柏龍紀/双葉社)だ。
「天皇は時の権力者と時には対峙し、時には協調しつつ、日本への『祈り』を捧げてきた存在です。これは、単なる歴史ではなく現代の問題でもあります」(八柏氏)
8月8日、今上天皇が「生前退位のお気持ち」を示すビデオメッセージを公表したが、それを快く思わない安倍政権は9月末に、ビデオメッセージをお膳立てした風岡典之宮内庁長官および西ケ廣渉・宮務主管を更迭し、内閣危機管理監だった西村泰彦氏(第90代警視総監)を送り込んだ。西村氏は安倍政権にもマスコミにも太いパイプがあることから、今後は天皇陛下サイドからの情報リークの動きをあらかじめ潰そうという意図もあるのではないかとみられている。
「こうした動きは江戸時代の天皇を彷彿とさせるものです。徳川幕府は財力を保障する代わりに政治に口を挟むなとして、五摂家といわれる門閥公家のなかから関白や、武家伝奏、議奏らを選び、二重三重の押さえを利かせて天皇が身動きをとれないようにしたのです」
今上天皇も歴代の天皇から学ぶことで、時代に合わせた天皇像を構築しているという。日本人ならば知っておきたいものだ。
(文=椎名民生)
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