ドナルド・トランプ大統領の誕生だ。11月9日に行われたアメリカ大統領選挙において、共和党候補のトランプ氏が民主党候補のヒラリー・クリントン氏に競り勝った。トランプ氏は「これからは団結するときだ。私はすべてのアメリカ国民のための大統領になる」と勝利宣言を行っている。
紆余曲折はあったものの、世論調査では常にヒラリー氏の優勢が伝えられており、7日に公表されたロイター/イプソスの週間世論調査では、ヒラリー氏が勝利する確率は「約90%」とされていた。なぜ、ここまで世論調査と実際の投票結果に乖離が生じたのだろうか。
経済評論家の渡邉哲也氏は、「トランプ氏の勝利はメディアの敗北であり、そもそも世論調査は信頼できるものではなかった」と語る。
「トランプ氏は過激発言などにより、『差別主義者』というレッテルを貼られていた。そのため、マスメディアの世論調査に対しては無難に『ヒラリー支持』と答え、実際はトランプに投票する人が多数存在すると見られていたのだ。
これは、イギリスのEU離脱においても同じだ。世論調査では残留が確実視されていたが、実際は離脱を選択した人が多く、5~7ポイントの乖離が生じていた。いわゆる本音と建前である。
その差を織り込んだとしてもヒラリー氏の優勢は変わらないとされていたが、トランプ氏が勝利したという事実はアメリカのメディアの崩壊を意味する。米大統領選では『選挙キャンペーン』の名の下に候補者や政党がメディアを買っており、『CNN』などの左派メディアは徹底的にトランプ叩きを行っていた。
しかし、トランプ批判が逆にトランプ氏の露出度を上げて票を伸ばすことにつながった。ヒラリー氏にとっては自分のお金でトランプ氏を宣伝した挙げ句、勝たせてしまったわけだ。
ほとんどのメディアはヒラリー支持の姿勢であり、一方インターネット上ではトランプ氏の人気が高かった。そのため、今回の選挙は『メディア対メディアを信頼しない大衆』という構図であったが、トランプ氏の勝利はメディアの機能不全をあらわにしたと同時に、既存のシステムが瓦解するという意味ではアメリカ社会に少なからず混乱をもたらすだろう。また、この動きは今後、世界のトレンドになると思われる」(渡邉氏)