慰安婦問題については、韓国で反日感情がエスカレートするにつれて、本筋が忘れられている感がある。
「慰安婦や慰安所の存在は誰もが認めています。論点は、強制連行の有無です。かつては『日本の官憲が奴隷狩りのように女性を力尽くで連行して慰安婦にした』という主張がまかり通っていました。
しかし、多くの議論を経て、旧日本軍あるいは当時の日本の総督府が関与して強制連行を行ったという証拠は何もないことがわかっています。むしろ、強制連行はなかったことを示す証拠や証言はあるわけです。彼女たちは、きちんと報酬ももらっています」(同)
なぜ韓国は日本との約束を平気で破るのか?
過熱する一方の慰安婦問題だが、実は以前の韓国国内では多くの関心を集めていたわけではなかったという。
「大きな問題になったのは、河野談話があったからですよ。日本政府の関与を認める談話を発表してしまったわけですが、河野さんも認めている通り、何か証拠があったわけではなく、慰安婦たちの話を聞いて判断したという話でしょう」(同)
1993年8月4日、当時の河野洋平内閣官房長官が発表した河野談話。問題とされているのは、以下の部分だ。
「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」
「強制連行」という言葉こそ使われていないが、慰安婦の募集に際して官憲の直接の荷担を認めている。強制連行があったと取られても仕方がない文面だ。
これによって、日本は韓国だけでなく国際世論においても非難され続けた。それを終息させるために、2015年12月28日に日韓合意が結ばれたともいえるだろう。日本側は韓国政府が設立した元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」に10億円を拠出する一方で、韓国側はソウルの日本大使館前の慰安婦像について「適切に解決されるよう努力する」という表現で移転を示唆したが、いまだ実現していない。
「日韓合意を結んだ外相会談の後の共同記者発表で、『最終的かつ不可逆的な解決』と言っていたのに、今となってはまったく意味がなくなってしまった。合意しても、何も意味がない。つまり、外交が成り立たないのです。人間関係であれば、もう一切かかわらなければいいだけですが、国家の場合はそうはいきません。
朝鮮半島で何か起きれば日本は必然的に影響を受けるし、日米同盟があって米韓同盟もあるため、日本は韓国とかかわりを持たざるを得ない。韓国はそういう事情もわかっているから、平気で日本との約束を破るのです。日本の一番の不幸は、良くない隣人を持ったということですよ」(同)
次回は、朝鮮半島の歴史と現状や北朝鮮と中国の思惑などについて、引き続き石平氏の話をお伝えする。
(文=深笛義也/ライター)
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