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孫崎享「世界と日本の正体」

北朝鮮のミサイル攻撃、日本は迎撃不可能…すでに2百基のミサイルが日本を射程に配備

文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長
北朝鮮のミサイル攻撃、日本は迎撃不可能…すでに2百基のミサイルが日本を射程に配備の画像1北朝鮮のミサイル発射を受けてトランプ大統領と緊急の電話会談を行った安倍首相(「首相官邸 HP」より)

 北朝鮮は3日、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に完全に成功した」との声明を発表した。北朝鮮による今回の核実験や相次ぐミサイル発射に対し、日本国内はヒステリックな反応をみせているが、国家の安全保障問題は冷静に考えていく必要がある。本稿では、国内では多く語られない10のポイントを列挙する。

(1)現在北朝鮮が発射しているミサイルは、米国を射程に入れようとするもので、日本向けではない。米国向けミサイルの性能アップで危機が増したはずの米国国内で、どれだけ騒いでいるか。日本と比較すれば、騒ぎはないに等しい。日本向けでないミサイルの性能が向上し、実験されたことで、なぜ日本は騒ぐのか。日本上空を飛んだといっても、高度100kmを優に超えている。日本を射程に収めているノドンは何年も前から、200~300基が配備されている。従って、日本にとっての新たな脅威ではない。

(2)日本向けノドンは先制攻撃で排除できない。日本を射程に収めているノドンは、移動式であったり、山の中に配備されたりで、先制攻撃でこれらを排除できない。数発排除に成功したところで、すべてを同時に排除することはできない。これを排除する軍事行動は、膨大な先制攻撃を受ける。

(3)ミサイル防衛はありえない。ミサイルを迎撃するには、発射の捕獲、その後の飛行の捕獲を行い、軌道計算をするのが必須である。まず、200~300基あるノドンの監視体制をつくることはできない。ミサイル確認は多くの場合、光学監視システムを利用している。夜中に発射されれば機能しない。発射後、途中でミサイルを察知することもできない。かつ、相手国が政治・経済・社会の重要拠点を攻撃する時には、どこに落下させる予定であるかがわからないから、ミサイルの軌道計算ができない。軌道計算ができなければ落とせない。

 地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の速度はマッハ5(秒速1800m)、ミサイル落下時は同2000~3000m。遅いPAC3でより速いミサイルをどうして打ち落とせるのか。PAC3の射程は15km。上に向かって撃つのであるから、守っている地域はせいぜい半径2~3km。ありえないが、かりに命中した時、北朝鮮のミサイルとPAC3の残骸はどうなるのか。バラバラになって落ちてくれば、被害はミサイル単体の落下より大きい。

(4)アラート・システムは機能しない。ノドンの発射を把握できないのであるから、日本向けの警報システムは実質ない。前述のとおり、監視は多くの場合、光学監視システムを利用している。夜中に発射されれば機能しない。

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

東京大学法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。1966年外務省入省。イギリス陸軍語学学校、ロンドン大学、モスクワ大学にてロシア語を習得し、在ソビエト連邦大使館を経て、1985年在アメリカ大使館参事官(ハーバード大学国際問題研究所研究員)、1986年在イラク大使館公使、1989年在カナダ大使館公使を歴任。1991年から1993年まで総合研究開発機構へ出向。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。国際情報局長時代は各国情報機関と積極的に交流。2002年より防衛大学校教授。この間公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月退官。

Twitter:@magosaki_ukeru

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