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稲川会と住吉会の緊張が高まる…2年前の「いわくつき事件」にも新展開が

文=山口組問題特別取材班
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稲川会本部から出された通達文書
稲川会本部から出された通達文書

 ここに来て、稲川会住吉会との緊迫度が増している。両者の衝突によって犠牲になったであろうと思しき死傷者も複数出ているのだ。

 既報の通り、3月4日未明には両団体と六代目山口組の関連組織などが群馬県伊勢崎市内で衝突し、発砲事件にまで発展、六代目山口組三代目弘道会系組員に複数の怪我人が出たが【参考記事「群馬でも銃声響く!」】、そこから遡ること3カ月、同県内では、何者かに暴行され死亡した稲川会系組員の遺体が病院前に遺棄されるという事件が起きていた。さらにその前日には、神奈川県横浜市内の病院でも、血だらけの住吉会系組員の遺体が放置されるという事件も発生していたのだ。

 そうした中で、今日の両団体間の亀裂を深めた大きな要因といわれている、19年1月に神奈川県川崎市で起きた発砲事件について進展があった。

 この事件は、稲川会の有力組織である三代目山川一家の最高幹部が自宅前で襲撃され、一緒に車から降りてきた最高幹部の妻まで被弾するというショッキングなものだった。被害者は一命をとりとめたものの重傷を負ったのだ。

 「当時、この模様を撮影した生々しい動画がSNSなどで拡散されて、かなりの話題となっていた。警察では早くから犯人を割り出していたのではないかといわれていたのだが、3月4日なってようやく複数の容疑者を逮捕した。ただ、業界関係者の間で当初から犯人として噂されていたのは別の人物A氏だった。今回逮捕された容疑者とA氏は付き合いがあったと見られているが、A氏は逮捕されていない。なぜなら、事件後しばらく経ってから、自宅で亡くなっていたからだ」(事情通)

 今回逮捕されたのは、絆會系組長とその実弟など5人。当局は早くから、絆會系組長を容疑者として割り出し、別件で逮捕していた。この組長はその後実刑判決を受けて服役していたが、満期出所を控えた数日前に、川崎での発砲事件の容疑者として逮捕されたのだ。しかも、組長の実弟は、19年10月に何者かに銃撃されたことがあり、当局も発砲事件の報復の可能性を視野に入れているという。さらに、今回の容疑者の中には、住吉会系組長も含まれていたのだ。このように、2年前に起きた事件に進展があり、容疑者が逮捕されたことも、今日の稲川会と住吉会との緊迫した関係をより一層、複雑にさせることになったのかもしれない。

「そうした中の3月3日、稲川会の上層部が、友好関係にある六代目山口組の上層部サイドを尋ねていたことがわかった。住吉会との問題を相談しにいったのかはわからないが、その翌日の4日には、群馬で各組織の衝突が起こり、六代目山口組三代目弘道会系組長らが稲川会系組員に発砲されるという事件が起きている。それを重くみたからこそ、稲川会サイドが現在、SNSなどで拡散されている通達文を出したのではないかと見ている」(同)

 その通達文とは、稲川会総本部から出されたと思われる「総本部御告知」と題された文書のことだ。その内容を要約すれば、今後、六代目山口組とのトラブルは理由如何に問わず認めないとするもので、特に拳銃などを所持したり使用したりした場合は厳重なる処分を科すというものだ。

「稲川会としては、傘下組員が、親睦団体である六代目山口組サイドに発砲するという群馬の事件も踏まえて、このようなことが再発しないよう誠意を表したと見られています。一方で、容疑者逮捕された川崎の発砲事件では、住吉会サイドから発砲されたということが明らかになった」(ヤクザ事情通に詳しいジャーナリスト)

 こうした状況が、稲川会と住吉会との和平に向けた話し合いを難航させ、さらなる緊張を生んでいるようだ。だからこそ、今回の稲川会の通達には、六代目山口組との友好関係を再確認したいという思いがあるのではないか。

 今、日本の三大組織の関係性が大きく揺れている。

山口組問題特別取材班

山口組問題特別取材班

ヤクザ業界をフィールドとする作家、ライターおよび編集者による取材チーム。2015年の山口組分裂騒動以降、同問題の長期的に取材してきた。共著に『相剋 山口組分裂・激動の365日』(サイゾー)がある。

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