ここ数年、ヤクザ社会において、不協和音が流れ続けている地域が存在していた。それは群馬県南部だ。ここには、六代目山口組の中核団体である三代目弘道会系組織、住吉会傘下組織、稲川会傘下組織、さらに半グレグループなどが入り乱れて存在しているのだ。そして、これらの組織間では、これまでも小競り合いが繰り返されてきたのだが、3月4日午前3時半頃には、ついに銃声がなり響く事態が起こったのである。事件の原因は現時点では明らかになっていないが、これまでの背景を考えても、起こるべくして起きてしまったといえるかもしれない。
「群馬県南部の伊勢崎市内で銃声が上がると、その原因についてさまざまな情報が錯綜し、陽が登った頃には、それに拍車がかかっていた。最初は半グレグループ同士の揉め事が発端ではないかという話だったが、その後は、半グレの面倒を見ていたそれぞれの組織が揉めて、そこに仲裁に入った別の組織の組長が弾かれたのではないかという見方も出てきた。しかし、ネット上に事件現場の動画と思われる物が出回りだすと、事情は少し違うのではないかという話にもなった」(地元関係者)
さらに、銃撃された人物が特定されると、緊張感はさらに高まった。被害者は、群馬県太田市に本拠地を置く弘道会系組織の二代目栗山組・栗山良成組長と同組組員である栗山組長の実子だったのだ。しかも、これを受けて、弘道会系組長ら幹部数人がすぐに現地に向かったというのである。
「群馬県で栗山兄弟といえば、その筋では知らない者はいない。一昨年に亡くなられた栗山組初代組長が兄で、現在の栗山良成組長が弟。もともとは山健組の有力組織出身で、六代目山口組分裂後、度重なる移籍の末に三代目弘道会へと加入。栗山組長は、現在は弘道会で今最も勢いを増す野内組で若頭補佐を務める一方で、弘道会の直参を兼任するほどの実力者だ」(同)
一方、栗山組長らを銃撃したのは、群馬県前橋市に本拠地を置く稲川会の二次団体・二代目前橋一家の関係者と見られているが、現在も逃走中だ。両組織間ではいったい何があったのか。業界に精通するジャーナリストはこのように話す。
「事件現場を含む群馬県の中南部エリアは、稲川会系組織の七代目田中一家も本拠地があり、前橋一家を含め縄張り争いが繰り広げられてきたと見られています。以前にもそうした背景から、七代目田中一家と関係性があるといわれる半グレグループが栗山組事務所に押し寄せ、挑発行為を繰り返したことがあり、その模様を収めた動画が拡散されたこともあったほどです【参考記事「 六代目山口組系事務所に火炎瓶攻撃」】。今回も縄張り意識が強い地元組織同士でくすぶり続けていた軋轢があったのではないでしょうか」
さらに、この地域では住吉会系武闘派組織の関連勢力も存在しており、緊張状態が続きつつ、ギリギリの均衡が保たれてきたという。そうした中で事件発生当初噂されたように、トラブルの仲介に入った勢力が発砲されたのではないかとの見方に繋がっていったようだ。そして、発砲現場周辺で、その直前に起きていたと見られる動画も瞬く間に拡散されていき、さらなる憶測を呼ぶことになるのである。
「この動画では、数多くの若者らが交差点内にとどまり、複数の車両を塞ぐような形で停車させ、車内にいた人間と乱闘になる模様が生々しく映し出されている。さらに、その乱闘現場に別の車両が突っ込んでくる様子も収められている。ただ、発砲されるところまでは映っておらず、この騒動の原因やこれが発砲事件に繋がったのかどうかまではわかりません。いずれにせよ、死者や怪我人が出てもおかしくないほどの壮絶な事態が起きていたことは間違いありません」(実話誌記者)
この乱闘現場でも一人が車に引かれ重傷を負っており、この人物も栗山組の関係者と見られている。前述の通り、こうした状況を受け、事件が起きた直後に弘道会系組長らが群馬県に向かったといわれたものの、その後、報復的な動きや二次被害が起きたという情報は流れていない。しかし、今も予断を許さない状況が続いているといえるだろう。
3月に入り、兵庫県西宮市をはじめ各地で発砲が多発するなど、まるで一部での緊急事態宣言の解除を待っていたといわんばかりに物騒な事件が立て続けに起きている。