2月に入り新人事を発表して、組織の活性化を図っている六代目山口組がさらに他団体との友好を深める動きを見せているという。それは、今回の新人事で若頭補佐に就任し、九州ブロック長となった四代目石井一家・生野靖道総長が、九州に拠点を置く他団体トップらと兄弟分になるというものだ。
「生野総長と三兄弟の盃を交わすと見られているのは、四代目福博会・金城國泰会長と二代目浪川会・梅木一馬会長ら2人の親分です。福博会といえば、歴代会長の後見を山口組が務めてきているなど六代目山口組とも関係性が深い組織として知られていました。一方で、業界関係者がざわついたのは、今回の兄弟盃の中に梅木会長も含まれていた点です」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
なぜ、梅木会長が六代目山口組の最高幹部と兄弟分になることが注目を浴びたのか。それは、神戸山口組と浪川会との関係に起因するのではないだろうか。浪川会の初代である浪川政浩総裁は、神戸山口組・井上邦雄組長と近いと見られ、同時に両組織の関係性も親密なものと思われていたのだ。だが一方で、浪川会と六代目山口組との関係性の深さを匂わせる出来事も起きている。
それは六代目山口組が分裂した2015年のこと。九州の独立4組織からなる親睦団体「四社会」(五代目工藤會(福岡県北九州市)、道仁会(福岡県久留米市)、太州会(福岡県田川市)、熊本會(熊本県熊本市)=順不同)が、六代目山口組との交流を凍結させる事態が起きたのだ。その理由は浪川会にあったと見られていた。浪川総裁はかつて道仁会を処分された身で、浪川会の前身組織である九州誠道会と道仁会は、複数の死傷者を出す激しい抗争を繰り広げていた。この抗争は2013年に終結するものの、その後、九州誠道会の勢力を引き継いで誕生する浪川会と四社会も対立関係が続いてきたのだ。
「そんな中での2015年、六代目山口組最高幹部らが、武闘派組織として知られる道仁会を尋ね、六代目山口組が処分した親分衆、つまり神戸山口組との交流を持たないでもらいたい旨を伝えた。その際に、後に四社会の総意となるのだが、道仁会サイドは業界の秩序にのっとり、処分された側となる神戸山口組と付き合うことはないと伝えたといわれている。しかし、その後、状況は一変。道仁会は、同時期に六代目山口組サイドが浪川総裁(当時は会長)と親交を深めつつあることを把握したようで、それがネックとなって、六代目山口組と四社会の決別に繋がっていくのだ」(業界関係者)
それでも、業界内では、浪川総裁と神戸山口組の井上組長との関係性の深さに目が行きがちだった。表立って六代目山口組との関係が語られ出したのは、2019年秋の六代目山口組・髙山清司若頭の出所後ということになるだろう。
「髙山若頭の出所後、浪川総裁は名古屋に髙山若頭を訪問しており、業界内で話題になったことがあった。同時に髙山若頭が、四社会の一角である工藤會の野村悟総裁の面会に訪れたことで、六代目山口組と四社会も雪解けに向かうのではとも見られていた。しかし、そんな中で今回、二代目浪川会の梅木会長と六代目山口組の若頭補佐である生野総長が兄弟になるという。つまり、六代目山口組と四社会、四社会と対立してきた浪川会の関係が不透明かつ複雑化してきており、業界関係者もざわついているのだ」(地元関係者)
そうした最中、こんなことも起きている。2月4日、道仁会首脳陣らが関東の巨大組織、住吉会を尋ねて、トップ会談を行ったというのだ。そして今後に向け、両組織ではより深い親睦関係が結ばれたのではないかと見られている。
九州随一の歓楽街、博多・中洲は現在、コロナ禍に直面し、考えられないほどの静寂に包まれているという。しかし、水面下では九州に本拠地を置く複数の組織が、時を同じく各方面で活発な動きを見せている。これらは何を意味するのか。 業界内外の関係者が注視している。
(文=山口組問題特別取材班)