オウム真理教による一連の事件をめぐって死刑が確定していた教団元代表の麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚ら7人の死刑が、7月6日午前に執行された。オウム真理教の事件に関しては計13人に死刑判決が下されているが、執行されたのは初めてだ。
死刑が執行されたのは、松本のほかに早川紀代秀、井上嘉浩、新実智光、土谷正実、遠藤誠一、中川智正。いずれもオウム真理教のキーパーソンで、早川、井上、新実、中川の4人は今年3月に執行施設のある拘置所に移送されていた。
確定判決によると、松本は「1989年11月に教団幹部らに指示して坂本堤弁護士一家3人を殺害」(坂本堤弁護士一家殺害事件)、「1994年6月に長野県松本市でサリンを散布させて住民8人を殺害」(松本サリン事件)、「1995年3月に東京の地下鉄車内にサリンを散布させて13人を殺害」(地下鉄サリン事件)など計13の事件を起こし、一連の事件による死者は29人にのぼるという。
松本は95年に逮捕され、翌年から裁判が開始された。しかし、意味不明な言葉を口走ったり奇声を発したりするなどの言動が見られ、最終的には意思疎通が不可能な状態であることが伝えられた。控訴審では精神鑑定も実施されたが、鑑定の結果「訴訟能力を失っていない」と判断され、2006年9月に死刑が確定した。
犯罪史上類を見ない大事件が節目を迎えたことについて、インターネット上では「最後の事件から20年以上もたっているのか。さすがに執行まで長すぎる」「ひょっとしたら執行されないんじゃないかと思ってた」「ひとつの時代が終わった感すらある」などという声があがっている。
また、死刑執行のタイミングをめぐっては「なぜ今?」という声も多く、臆測が広まっている。もともと、19年4~5月に天皇陛下の生前退位と改元が行われるため、「その前に執行されるのでは」という見方が多かった。そのため、「やっぱり平成のうちに決着をつけたか」「9月には自民党総裁選があるし、19年になっちゃうと祝賀ムードに水を差すからね。東京五輪前にやるわけにはいかないし」「憲法改正や水道民営化の話題があがってきた時期の執行には意図がありそう」という声があがっており、なかには「(7月3日に)ワールドカップの日本戦も終わったからかな」という意見もみられる。
さらに、一度に7人の死刑が執行されたことについても「ずいぶん思い切ったな」「異例中の異例では」と波紋が広がっている。上川陽子法務大臣は記者会見で「慎重にも慎重な検討を重ねた」と述べているが、参議院議員の有田芳生氏はツイッターで「常識的に判断してありえません。麻原彰晃の裁判資料だけでも部屋ひとつが一杯になります。まともな法相ならそれを検証します。ましてや7人。後世の検証にたえうる麻原の精神鑑定も行っていません。政治判断です」と反論している。
異例の死刑執行に「まさに公開処刑」の声も
6日に放送された『とくダネ!』(フジテレビ系)では、「執行手続きが始まった」という速報のテロップが流れ、予定されていた特集がすべて変更となり、その後は死刑執行のニュースが報じられた。
速報を受けて、コメンテーターの別所哲也は、「地下鉄サリン事件というのは僕も鮮明に覚えていますけど、今の若い人たちは何が起こっていたのかわからないところもたくさんあると思います」「今の教団がどのようなかたちで全国にあるのか、そういったことにまた大きく目を向けて、私たちの社会でこの事件がなんだったのか検証するべきだと思います」とコメントした。