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小此木氏が落選すれば菅首相は失脚か…横浜市長選が激戦、自民党は党利党略でIR賛成→反対に豹変

文=編集部
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横浜市長選挙特設サイトより

 今月8日告示・22日投開票の横浜市長選に注目が集まっている。菅義偉首相のお膝元であり、菅首相の全面支援を受ける小此木八郎元国家公安委員長が落選した場合、菅首相が失脚する可能性が出ているためだ。横浜市長選の主要争点はカジノを含むIR誘致だが、推進してきた自民党が一転反対となったことも「選挙に勝つことしか考えていない党利党略」と市民の不信感を買っている。

 菅政権は新型コロナウイルスの感染拡大への対応のまずさもあり支持率が低迷するなか、まさに菅首相の進退をかけた「天下分け目の戦い」の性格を強めている。

菅首相、小此木氏への「全面支援」が保守分裂招く、負けたら菅降ろしが本格化

 今回の横浜市長選をめぐっては、自民党はIR推進の立場を一貫して取ってきた。市民からは異例の約20万もの反対署名が集まるなど強行姿勢に反感が高まるなか、現職の林文子市長は後ろ盾である菅首相や自民党の方針に従ってきた。ところが、6月末に突然、小此木氏が「IR誘致反対」を唱えて市長選に出馬し、菅首相が「全面支援」すると表明したことで、一気に保守分裂選挙となった。以下は全国紙政治部記者の解説。

「要するに、菅首相がIR推進では勝てないと判断して、地元にゆかりのある小此木氏の出馬を認めたということに尽きると思います。菅政権は新型コロナウイルスの感染防止対応がずさんだったことで、報道各社が調査した内閣支持率が危険水域とされる30%台まで急落しています。飲食店への時短要請など外出自粛による国民の不満もある。少しでも反対要素をなくしたいと考えるのは当然で、地元の横浜市長選ならなおさらでしょう。自民党は選挙至上主義ですから、とにかく勝っている間は文句を言われませんが、負けた瞬間に党内から『菅降ろし』の動きが強まるのは必定。今さら林市長に方針を変えてくれとも言えないので、小此木氏を新たな候補として立てたというわけです」

 7月17日に公表された毎日新聞の全国世論調査では内閣支持率は30%で、不支持率はその倍以上の62%。菅首相が最も気にしているといわれるNHKの調査でも7月の内閣支持率は33%と、第2次安倍政権時を含めても歴代最低の数字になっていることからも、菅首相の焦りが伺えるというものだ。

ハシゴ外された林氏「納得いかない」と出馬で保守分裂、選挙後に菅氏の支持基盤弱体化は必至

 一方の林市長は本来なら自民党の支持を得ていたこともあり、候補の一本化などに応じても良さそうなものだが、それは許さない背景があったという。以下は横浜市政関係者の話。

「林市長からすれば、散々悪者にされた挙げ句、都合が悪くなったら辞めてくれというのは応じたくないという意地の部分が大きい。そこをIR誘致で利益を得るはずだった横浜財界と自民議員の一部が『菅首相の方針転換に振り回されるのは我慢できない』と同調したというわけです。もし林市長が当選した場合、公約通りIR誘致を進めることになるわけですが、その時は確実に菅氏の支援が必要になる。その時、一度『反対』の候補者に鞍替えした菅氏の権威は地に落ちてるでしょうから、すんなり事が運ぶかどうか。もはや誰のためのIRなのか、非常識も極まる。

 菅氏の強さの源泉は地元の横浜を秘書時代からの努力と実績で完全に押さえ込んでいるというところにあり、小此木氏が勝った場合でもそこにひびが入るのは避けられない。横浜市政関係者の間では『目先の勝ちに固執しすぎだ』と呆れられています」

 林市長からすれば、落選した場合でも「闘った」という実績だけで経済界の支持は引き続き得られるわけで、次につながる可能性が出てくる。合理的に判断した面もあるだろう。

 ちなみに立憲民主党など野党からは、統一候補として元横浜市立大学医学部教授の山中竹春氏が出馬した。

カジノの裏事情の怪文書が永田町に飛び交う、市財界関係者「前から噂されてた内容」

 さて、選挙の注目度、加熱度のバロメーターの一つに怪文書がある。今回も8月に入って永田町では<小此木八郎氏 横浜市長選の真相と現状>と題したA4版の文書4枚が飛び交っている。内容は、菅首相がなぜIR誘致反対を公約とする小此木氏の支援に回った背景などについて、菅首相の官房長官時代の状況にふれながら述べたものだ。真偽不明ではあるものの、ある横浜市財界関係者はこう話す。

「この文書のなかには林市長が出馬を電話で菅首相に伝えた時、無言の菅首相に対して林市長が『総理、聞かれていますか』と話すと『どうでもいいことだ、私には関係ない』と電話を切ったこと、それと『徹底的にやりますよ』との恫喝ともとれる伝言をしたことが書かれてあります。また、その後に菅氏が和泉洋人首相補佐官などを使い地元ゼネコンに小此木支援をするように工作していることなどが書かれてあるのですが、このような内容は横浜政界で従来からささやかれてきたことで、あながち事実無根ともいえない。

 おそらく、IR推進派で汗をかいてきた人たちのなかで、今回、菅首相と自民党神奈川県連にハシゴを外されたことに憤慨した方によるものではないでしょうか」

 出所もわからない文章ではあるものの、永田町関係者の間では「自然発生的に広まったというようなスピードではなく、明らかに意図的にばらまかれたもの」(ベテラン秘書)との見方が多く、反菅派の横浜市長選への思惑が働いていると考えるのが自然だろう。

山中氏への週刊誌報道に出身の横浜市大が騒然

 野党統一候補の山中氏へも「紙爆弾」が撃ち込まれた。写真週刊誌「FLASH」(光文社)は2日、『横浜市長選「野党統一候補」がパワハラメール…学内から告発「この数年で15人以上辞めている』と題した記事をネットで配信した。山中氏が出身の横浜市立大学医学部教授時代にパワハラ行為を行っていたなどとする内容で、山中氏は「事実無根の報道」として自身のホームページで否定している。

 当然ながら横浜市立大学は騒然となったわけだが、同大の水木信久教授は以下のように述べている。

「記事中では、山中氏の同僚、秘書、部下などが高圧的な言動が原因で15人以上辞めていることになっているのですが、山中氏が在職中に学内でハラスメントをしていたという話は聞いたことがありません。そもそも本学は、2011年に社会問題化したパワハラ行為が発生して、大きく報じられた経緯があり、パワハラには特に厳しく対処している大学です」

 日本最大の人口150万人の基礎自治体の選挙であり、もともと注目度が高い横浜市長選。特に今回は菅首相の進退を賭けた闘いに発展しそうで、22日の投開票の結果に注目が集まっている。

(文=編集部)

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