東京一極集中の是正、地方活性化を目的に政府が「中枢中核都市」82市を選定した。その位置づけは「地域の経済や住民生活を支える拠点」というもの。選ばれた82市の所在地は43府県で、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏は含まれていない。
今後、中枢中核都市が周辺自治体も含めた地域活性化、人口流出防止のための対策計画を提出すれば、国がこれを審査、認定して財政支援するという。
しかし、82市の内訳を見ると、首をかしげざるを得ない。札幌、名古屋、大阪、金沢、松山など、政令指定都市や県庁所在地が半数以上も含まれている。これらの都市はすでに地域では人口や企業、医療機関、教育機関などが集積している都市である。もちろん、県庁所在地とはいえ人口流出、人口減は見られるが、人口流出・過疎が深刻化している中小都市とは明らかに状況が異なる。
これまでも地方自治法第252条の22第1項で定める政令により、全国に54市が中核都市に選定され、都道府県の事務権限の一部が移譲されてきた。今回はそれ以外の伊勢崎市、太田市(いずれも群馬県)、春日井市(愛知県)、高岡市、射水市(いずれも富山県)などの地方都市が加わった。従来の中核都市は人口20万人以上が要件のひとつだった。そのため、山口県では人口26万人の下関市は選定されていたが、人口19万5000人余りの山口市は県庁所在地でありながら中核都市に選定されていなかった。それが今回は晴れて選定されたのである。このあたりの基準も明快さを欠く。
一部地域への人口集中が進み、小都市、町村の衰退・過疎化が加速
今回、中枢中核都市のお墨付きを得た地方都市は「支援を歓迎したい」「周辺自治体への波及効果も大きい」と喜んでいるようだが、冷ややかな声も少なくない。同じ県内で、県庁所在地など人口が20万人から100万人程度の中枢中核都市とその周辺が厚遇を受けて活性化すれば、人口5万人以下の小都市や町村の人口を吸収してしまいかねない。
たとえば北海道。道内で人口が多い都市は、札幌、旭川、函館、釧路、苫小牧、帯広の順。かつて商業都市として栄えた小樽は8番目だ。今回、中枢中核都市に選ばれた札幌、旭川、函館の3市は、国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口」によると、2045年の人口は札幌が約180万人で15年に比べて15万人の減少、旭川は約25万人で9万人の減少、函館は約16万人で10万人以上の大幅減となっている。これら3市は、今回の決定を大歓迎だろう。