しかし、選定から漏れた他都市はどうだろうか。45年に人口が約6万人と、15年の半分に減ってしまうとみられている小樽市。1964年の人口は20万人以上だった。それが今では11万6764人(18年11月末現在)と、半世紀で半減した。小樽運河沿いの観光客の群れを見ているとにぎわっているように見えるが、市勢は衰退の一途なのである。このまま札幌にのみ込まれてしまうのか。それとも“札幌の周辺都市”ということで、活性化の恩恵にあずかれるのか。
だが、札幌に近い小樽は、まだいいかもしれない。カジノ誘致で活性化を狙っている釧路市の人口は、同11月末現在約17万人だが、45年には11万4000人に減少するとみられている。減少率は3割超だ。札幌にも遠く、カジノ誘致についても、道のIR有識者懇談会は「苫小牧市優位」との認識を示しているから、これも厳しい。すでに空洞化が進み、駅前一帯は寂しい限りだが、この先どうなってしまうのか。
中枢中核都市とその周辺だけが生き残り、それ以外は衰退の一途――。そんなことにならなければいいのだが。
東京23区居住者、通勤者の地方移住に最大300万円を支給
この政策でもうひとつ腑に落ちないのが、東京23区に在住か通勤する若者らの地方移住者への支援策だ。地方で起業した場合に最大300万円、就職した場合に最大100万円を支給するというのである。
移住をめぐっては受け入れ側の自治体が、住宅取得費用や子育て費用を支援する制度が各地にある。人口減を食い止め、活性化を図りたい地方の自治体が限られた予算から捻出している制度で、これは理解できる。
しかし、東京から出ていく人にだけ国がカネを払うというやり方はどうなのか。札束で東京の若者らの移住を促進しようという手法は、あまりにも安易ではないか。東京以外のエリアからの移住者との差別にもなってしまう。
東京の人口を減らしたいのであれば、政府の機関を地方に移すことから始めていくべきだろう。今のネット時代に、官庁や政府関連機関が東京に集中する必要はないといえる。地方の国立大学の充実化、魅力向上を図り、卒業後も地方にとどまって就職できるような環境を整備していくなど、地方活性化に向けて国が手をつけるべきことはいくらでもあるはずだ。
本当に深刻な過疎化、衰退に悩んでいる自治体に支援を行い、その一帯の活性化プランを自治体、住民が共に練り上げていくシステムの構築が必要ではないだろうか。
(文=山田稔/ジャーナリスト)