安倍政権は今回、「6」の公約違反を犯した。前述した日本郵政とアフラックの業務提携強化である。これは明らかに「金融サービス(等)のわが国の特性」を踏まえていない。事実、かんぽ生命と現在提携している日本生命は、「5年以上にわたり、さまざまな面で協力を行ってきた経緯もあり、今回の話については遺憾です。今後については、かんぽ生命と話をしていきたいと考えています」とコメントしている。
一方、アフラック日本は「この提携は(政府保有企業と民間企業の)対等な競争条件が実現されている事例だ。日米間の交渉にもいい影響がある」と述べているが、わが国の金融サービスの特性を踏みにじっただけである。
しかも、これがTPPに関する最初の公約違反ではない。「4」の公約もすでに破られている。安倍政権発足からわずか1カ月で、BSE(牛海綿状脳症)対策で実施している米国産牛肉への輸入規制が、10年ぶりに大幅に緩和されたのだ。輸入条件だった月齢を「20カ月以下」から「30カ月以下」に拡大した。米国では月齢16~22カ月での食肉処理が一般的なので、今回の措置は規制緩和ではなく事実上の規制解除、野放しになったといっていい。確かにBSEはピーク時には世界全体で年間約3万7000頭も発生していたが、昨年はわずか12頭だった。規制緩和に踏み切った背景に、発生が世界中で激減して、感染リスクがなくなったとの判断があるのもわかる。
しかし米国には前歴がある。05年に「20カ月以下」の輸入が解禁された直後に、危険部位が混入していることが発覚し、再び輸入を停止したことがあるのだ。その間に米国で根本的な改善が行われたとは到底思えない。安倍政権が成立してから7カ月だが、すでにTPPに関するたった6つの公約のうち、2つも反古にされている。TPPをめぐる安倍政権の動きは、危険を孕んでいるといえよう。
(文=久保田雄城/メディア・アクティビスト)