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ニセ札造り、朝日新聞にケンカ売る…あの“問題”芸術家はなぜ事件を起こし続けた?

文=大石泰彦/青山学院大学法学部教授
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●現在にも通じる赤瀬川氏のメッセージ

 赤瀬川氏は64年、同志とともに東京の路上で「首都圏清掃整理推進運動」と称するパフォーマンスを行った。これは、銀座・並木通りの歩道を不必要なほど徹底的に清掃・浄化し、第1回東京オリンピックに向けて急ごしらえでハリボテの「きれいな近代都市」をつくろうとしている時流に抗し、「本当のキレイ」の意味を問いかけたものである。同時にそれは、東日本大震災の被害者を数年も仮設住宅に押し込めたまま、またヘイト・スピーチや福島の放射能汚染問題について真摯に向き合わないままに、人やモノが2回目の東京オリンピックに向けて黙々と動員されている「現在」についても当てはまるメッセージであろう。

 このほかにも赤瀬川氏は71年に、「櫻画報事件」を起こしている。これは同氏が週刊誌「朝日ジャーナル」(朝日新聞社)に連載していた風刺漫画・櫻画報の最終回(3月19日号)で、朝日新聞を風刺する作品を発表したことに端を発する事件である。赤瀬川氏は同誌で、水平線上に「朝日新聞」の題字が現れ、そこに「アカイ アカイ アサヒ アサヒ」という、かつての国定教科書の文言がそれらしく付され、欄外に「朝日は赤くなければ朝日ではないのだ。ホワイト色の朝日なんてあるべきではない。せめて桜色に」と記した作品を描いた。学生運動・市民運動の退潮の中で、急速に路線を体制寄りにシフトし始めていた朝日の上層部は同作品を問題視して当該号を自主回収した。さらに同誌を2週間休刊にしたうえ、60名の配置転換を行った。
 
 この事件が、「吉田証言・吉田調書問題」で権力に異常にすり寄る現在の朝日新聞の姿に重なっていることを、もはやここで詳しく説明する必要はないであろう。

 赤瀬川氏がこれらの作品を通じて発揮した「本質を射抜く眼力」は、作品がつくられた時代からすでに約半世紀の歳月を経た現在もなお鋭く、新鮮であり続けているのである。
(文=大石泰彦/青山学院大学法学部教授)

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