アベノミクスで貧困拡大、生活保護制度改悪で餓死者増?企業優遇で労働環境は劣悪に…
日本弁護士連合会前会長の宇都宮健児弁護士に、貧困拡大・秘密保護法・憲法・集団的自衛権をめぐる現状と課題について話を聞いた。
●生活保護費削減で3日分の食費失う
「実は、昨年の国会では、秘密保護法以外にも重要な法案がいくつも可決されています。前回の通常国会で生活保護基準が変更され、昨年8月1日から生活保護費が引き下げられました。3年間で670億円削減させる予定になっています。生活保護に関しては、03年に0.9%、04年に0.2%と、過去2回基準が引き下げられていますが、今回の引き下げ幅は平均が6.5%、世帯によっては最大10%の支給額引き下げになっており、制度利用者が大変なダメージを受けます。
支給額の見直しは、物価下落を大きな理由とするものですが、物価が下がっているのはパソコンや家電製品などで、生活必需品、水道光熱費、公共交通機関の料金、灯油などの生活に直結する費用は円安の影響等により、むしろ上がっています。そういう中で生活保護世帯の生活費を670億円も削減するのです。
ある生活保護受給者から、私は手紙を受け取りました。昨年8月から受給額が2000円下がったそうです。その人の食費は1日700円くらいで、2000円は約3日分の食費に相当します。その2000円の痛みが国会議員はわかっていないのではないかと、手紙は訴えています。
また、生活保護に関しては、改悪となった問題がほかにもあります。そのひとつは、申請方法の変更です。それまで口頭でも可能だった生活保護申請は、書面で申請しなければならなくなりました。その際に、収入や所有財産を証明する資料を添付しなければならないのですが、路上生活者やDVの被害者などは、収入や財産を証明する資料がない方が多く、書類不備を理由に窓口ではねつけられる可能性があります」
●英独は生活保護受給者9%台、日本は餓死者多発
「それから扶養義務者の調査を強化することになりました。例えば、生活困窮者が生活保護を申請する場合に、実家にどれだけ扶養能力があるかなど、扶養義務がある親族の収入や資産が徹底的に調査されます。
12年の4月頃、ある人気お笑いタレントの母親が生活保護を受けていたことに対してバッシング報道がありました。現在の生活保護法では、扶養義務者の扶養能力は生活保護受給の要件になっていないにもかかわらず、あたかも不正受給のように報道されていました。
さらにワイドショーなどは、生活保護受給者がパチンコ屋に行っているところを隠し撮りして放送し、生活保護受給者が働かずに遊んで暮らしているかのようなイメージをつくりました。