アベノミクスで貧困拡大、生活保護制度改悪で餓死者増?企業優遇で労働環境は劣悪に…
国家戦略特区構想は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)と密接な関係があります。韓国では、アメリカとFTA(自由貿易協定)を締結する前に特区制度がつくられており、医療や教育などについて規制緩和が行われています。
国家戦略特区は、雇用・医療・教育・農業などの分野にまたがり、関連の法案も出されています。一番の問題は、雇用特区においては、簡単に解雇でき、残業代を払わなくてもいいような制度の導入を目論んでいることです。
しかし、このような雇用特区構想は、実質的に“解雇特区”であると批判されたことで先送りにはなりましたが、安倍政権は、基本的にこのような考え方を変えていません。
安倍首相は、『企業が世界一活動しやすい国をつくる』というスローガンを掲げ、労働者を解雇しやすく、残業代も払わなくていい制度をつくろうとしています。確かに、そういう特区ができれば企業には天国ですが、働いている人にとっては地獄です」
●国会が博打を推奨する異常事態
「さらに国家戦略特区に関しては、カジノをつくって博打をやらせようとしていることも見逃せません。中国・マカオが、米国・ラスベガスを抜いて世界で最も売り上げの大きなカジノとなりましたが、その規模は3兆円です。ところが、日本のパチンコ・パチスロ産業は19兆円市場であり、すでに世界屈指のギャンブル大国といえます。
クレジットカードやサラ金による多重債務者の救済をしてきた経験上、ギャンブルの依存症になって相談に来るケースが多くあります。ギャンブル依存症は一つの病気であるとWHOも認めています。厚生労働省の調査でも、依存症にかかっている人は数百万人いるとされていますが、この対策はほとんど取られていません。
隣国の韓国は、国家機関の中に依存症対策のセクションがあり、パチンコは06年に全面禁止になりました。韓国内には17カ所にカジノがありますが、韓国民が利用できるのは、そのうちの1カ所だけです。ソウルからバスで2時間半くらい走ったところにあるカンウォンランドがそれです。ところが、この1カ所だけでも、全財産をなくしたあげくに自殺した人が10年間で35人出ています。強盗、殺人、窃盗などの犯罪が激増し、周辺で野宿するホームレスも増えています。このようなことが大きな社会問題になっているのです。
超党派の国会議員から成る国際観光産業振興議員連盟(カジノ議連)の最高顧問を務めているのが安倍首相と麻生太郎副総理、石原慎太郎・日本維新の会共同代表、小沢一郎・生活の党代表で、ほかにも主だった国会議員が顧問に名を連ねています。議連には与野党135人の国会議員が入っています。博打は刑法で禁止されているにもかかわらず、首相をはじめ錚々たるメンバーが博打を勧めているのは異常ではないでしょうか」
安倍政権は、貧困拡大政策と併行して、解釈改憲で集団的自衛権の行使を容認しようと躍起になっている。貧困拡大と集団的自衛権の行使容認はどのような関係があるのか。
次回は、この点について言及する。
(文=林克明/ノンフィクションライター)