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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

インフルエンザ、市販の風邪薬で重篤な副作用の危険…一部の解熱剤、子供の死亡リスクも

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士
インフルエンザ、市販の風邪薬で重篤な副作用の危険…一部の解熱剤、子供の死亡リスクもの画像1「Thinkstock」より

 今年もインフルエンザが猛威をふるっています。

 国立感染症研究所の調査によると、2018年第5週(1月29日~2月4日)のインフルエンザ患者数は、一医療機関当たり54.33人となり過去最多を更新しているそうです。

「インフルエンザと風邪は、何が違うのですか?」とよく質問されます。風邪もインフルエンザも、ウイルス感染によって発症します。違うのは、ウイルスの種類です。インフルエンザの場合、検出キットも開発されているので確定することができますが、風邪の場合はウイルスの種類がとても多く、確定することができません。

 また、症状の違いについてですが、一般的にインフルエンザは風邪よりも「急に」「激しく出る」という特徴があります。インフルエンザウイルスの潜伏期間は短いので、感染すると比較的早く発症します。しかし、「急に激しい症状」はA型の時に多くみられ、今年のようにB型が流行ると激しい症状や高熱が出ないこともあり、見分けることが難しいのです。B型に感染していても、インフルエンザだと気づかない「隠れインフルエンザ」の患者さんも多くいるようです。

 今までは、A型はその構造もどんどん変わり症状も劇症、B型は構造が変わりにくいので一度罹ると抗体もできやすく症状も激しくでないので、大きな流行にはなりにくいとされていました。また、A型の流行の後、遅れてB型が流行ることが多かったのですが、今年は早い時期からB型も流行してしまったことで、罹患者が拡大してしまいました。

「風邪かインフルエンザかハッキリしない場合、どうしたらいいですか?」という質問もよく受けますが、インフルエンザも風邪もウイルス感染で、対処法は同じと考えてください。

インフルエンザの際の対処法

 インフルエンザだと思っても、病院に行けないときもあるでしょうし、夜間、急に発熱することもあるでしょう。そのような時に、「まずは熱を下げよう」と考えるかもしれませんが、熱を下げることが最優先の対処法ではありません。

 最優先にすべきことは、発熱による脱水を起こさないように水分を十分に摂って、温かくして寝ることです。風邪を引いたときと同じです。無理をしないで、「できるだけ安静」を心がけることが大切です。

 それから、「慌てて市販の風邪薬を飲まない」ということも覚えておいてください。インフルエンザだった場合、まれに風邪薬に含まれている解熱剤が重篤な副作用を引き起こすことがあるからです。

 ボルタレンやポンタールなど、ある種の解熱鎮痛剤はインフルエンザには使用しないでください。特に、インフルエンザ脳症に罹ってしまったお子さんにボルタレンを使うと、死亡率が高くなるとされています。

 通常、インフルエンザが疑われる時には「アセトアミノフェン」という解熱鎮痛剤が処方されます。アセトアミノフェンは坐薬・シロップ・細粒・錠剤といろいろな剤型があるので、赤ちゃんから大人まで使い勝手がよく、現在までの報告ではインフルエンザ脳症に罹ったお子さんが使用しても死亡率が高くなるということはありません。

 処方薬では「カロナール」「アセトアミノフェン」、子ども向けの坐薬では「アルピニー」「アンヒバ」などがあります。小さなお子さんのいるご家庭では、冷蔵庫にアルピニーやアンヒバ坐薬のストックがあることも多いでしょう。アセトアミノフェンは市販薬としても購入することができます。市販薬では「タイレノールA」「ラックル」、子ども向けの市販薬には「小児用バファリンチュアブル」などがあります。

 いつもと違う「ゾクッ」が来たら、風邪薬は控えたほうが安全です。どうしても市販薬を買うときには、薬剤師等に相談してから購入してください。また家にある薬を飲む場合は、箱に書いてある成分名をしっかり確認してから服用してください。

 インフルエンザといえどもウイルス感染ですから、高熱が出るのは体がインフルエンザウイルスと闘っている証拠です。熱を出すことで免疫力を高め、ウイルスを退治しようとしているのです。「発熱したらすぐに熱を下げよう」とするのは、得策ではありません。安静に寝ていれば、やがて熱は下がり、治ります。その免疫力を最大限高めるためには、ほかに余分なエネルギーを使わないこと、すなわち寝ていることが一番です。もちろん、熱によってうなされて眠れない、つらい、苦しいといった状態で安静が保てない場合は、解熱剤を使用してゆっくり睡眠をとるようにしてください。

「インフルエンザには特効薬のタミフルがあるじゃないか」--。そんな声が聞こえてきそうです。世界中のタミフルの70%以上が日本にあるともいわれており、日本では「インフルエンザの特効薬」と捉えている方が多いようですが、本当にそうなのでしょうか。次回は、このタミフルについて、ご説明いたします。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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