1月24日付朝日新聞より
まず、所得税の最高税率が40%から45%に引き上げられる(2015年分以後から)。ただ、対象は課税所得が4000万円以上の人なので、大企業の役員や外資系金融機関の敏腕ディーラーはともかく、一般のサラリーマンにはまったく関係ない。
次に、たとえ普通のサラリーマンでも、親が裕福な人には関係がある相続税。相続税には「基礎控除額」があり、これは相続税が課されるかどうかのボーダーラインだ。その金額は、現行は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」となっている。相続するのが奥さんと子ども2人という家庭だと8000万円まで非課税ということだ。今度の改正ではこの基礎控除が縮小され、改正後は「3000万円+600万円×法定相続人の数」となる。つまり、奥さんと子ども2人だと4800万円となり、それ以上の金額の遺産相続は課税対象だ。
現在は相続税の課税対象者は4%程度といわれ、100人のうちわずか4人しか払っていない税金だ。かなりの富裕層だけが対象と言っていい。しかし、改正後は課税対象者が6~8%まで増える見込みで、大都市に限れば、20%くらいが相続税の対象になるのではないかといわれている。その理由は、日本で高額の相続財産としては、不動産(主に土地)が多いからだ。地価の高い大都市に住む高齢者の中には、手持ち現金はわずかだが唯一の財産が土地・家屋、というケースが少なくない。東京23区内なら、5000~6000万円の評価額がつく不動産はザラにあるはずだ。
●相続財産の絶対量を減らす
そのような人たちは、相続税が払えずに自宅が差し押さえということにもなりかねない。そこで、この増税の緩和措置として、「小規模宅地等の特例」の適用範囲が拡大されることになっている。
この特例は、一定の面積までは、土地の相続税評価が減額されるというものだ。現在、居住用は240平方メートルまでが特例の対象だが、改正後は330平方メートル(100坪)まで引き上げられ、対象が広がる。
土地を更地で持っている人は、アパートなどの賃貸用物件を建てれば、土地の利用区分が更地(自用地)から貸家建付地に変わり、更地より2~3割程度の相続税評価額引き下げが可能となる。実際の価値は同じでも、相続税評価上は大変有利だ。
相続税にひっかかりそうな資産を現預金で持っている人には、対策として、相続財産の絶対量を減らすことをおすすめする。財産を子どもや孫などにあげる生前贈与だ。ただ、生前贈与で気をつけなければならないのが贈与税だ。配偶者の場合、贈与税の配偶者控除(2000万円)という特例があるが、対象となる財産は限られており、1人に対して一生で1回しか使うことができない。
そこで大いに利用したいのが、110万円という贈与税の基礎控除。この金額までなら非課税だ。1人あたり110万円と少額だが、毎年利用することが可能で、孫などの法定相続人以外にも利用できるメリットがある。例えば、子どもと孫合わせて5人に110万円ずつ贈与すれば毎年550万円ずつ財産贈与ができ、10年間で5500万円圧縮できる計算だ。
●話題の孫相続は、使い勝手が悪い?
贈与税関連で話題になっているのが、孫への教育資金贈与。現行では一括贈与は課税される。改正案では、孫1人につき教育資金1500万円まで非課税で生前贈与できることになっている。仕組みは、祖父母が信託銀行に教育資金をプールしておいて、それを孫が必要に応じて引き出す形だ。ただ、引き出した資金を教育資金に使ったことを証明する書類をその都度金融機関に提出しなければならない。贈られた教育資金を30歳までに使い切れなかった場合は、残りの金額に贈与税がかかる。若年層への資産移転が進むとの利点がある半面、ある税理士は「実効性に疑問がある」という。
「もともと教育資金については、扶養義務者相互間では非課税でした。お金を引き出すのに、いちいち書類を出すというのも面倒な話。だったら、親名義で口座を作って、そこからキャッシュカードで引き出せるようにしたほうが早い。ちょっと使い勝手が悪い制度かなという印象があります」(税理士)