円安進行で恐怖の貧しさ到来 物価や住宅高騰、輸入食品ばかり、外資乗っ取りで財産流出
しかしこの値上げは1ドル=160円の恐怖のほんの一部分にすぎない。日本人にとって本当につらいのは、円安によって日本の財産が海外の富裕層に激安で買われてしまうことにある。
ここで理解しておくべきことは、異次元金融緩和が引き起こす円安は、ドル以外の通貨も含めての円安だということだ。だからこの円安でアメリカ人だけではなく、中国やアジア諸国の富裕層にとっても日本は激安国家になってしまう。「半額ニッポン」の到来である。
東京の銀座や新宿など繁華街の百貨店で買い物をする海外の富裕層にとって、3年前の1ドル=80円の時期と比べればすべての買い物が1ドル=160円では半額になる。資生堂の化粧品も、グリコのチョコレートも、パナソニックの家電商品もすべてが外国人にとっては激安な買い物の対象になる。
事がこのような海外旅行客の買い物で済めばまだよいのだが、実際はもっと広範囲に海外富裕層の激安ショッピングの波紋は広がるだろう。
わかりやすく言えば、本物の高級食材は海外勢に買い占められるようになるだろう。まぐろや高級牛肉の本当においしいところ、手間暇かけて栽培したブランド果実、蔵元の抱える在庫の中で一番おいしい日本酒の樽、そういった最上級の商品は隣国への輸出品としてカネの力で押さえられてしまう。その影響で、日本の富裕層は普通の国産品で我慢をすることになり、庶民が口にできるのは輸入食材が中心という玉突き現象も起きるだろう。
日本の優良企業は今でも外資比率が高いのだが、1ドル=160円のレートともなればソニーや任天堂、シャープといった技術資産が豊かで本業が苦しい企業は、ますます外資の比率が増えていく。それよりも一段、時価総額が低い老舗の中堅上場企業は、本業の業績が悪くなった途端にアジア資本による乗っ取りのリスクが現実化するだろう。結果として、これまでわれわれが蓄積してきた技術や知的財産といった資産が海外に流出していくことになる。
●住宅が買えない
同時に日本の不動産にも海外資本の流入が起きる。都心や湾岸などの人気の不動産物件は、海外富裕層の日本での別邸として買われるようになる。それだけではなく賃料収入と将来の値上がりを見込んだ投資物件として、普通ランクの不動産物件も買い占められていくようになる。すると何が起きるかというと、不動産バブルが再来するのである。