この人は大丈夫なのだろうか――。
第4次安倍再改造内閣で環境大臣に就任した小泉進次郎氏の発言が、各方面で波紋を呼んでいる。就任直後の17日、福島県を訪問した際の記者会見で東京電力福島第1原発由来の除染廃棄物の最終処分を問われ、「30年後の自分は何歳かな」などと発言。インターネット上で「ポエム」と指摘された。そして22日、米ニューヨークの国連本部で開催された環境問題や気候変動問題をテーマにしたイベントで「セクシー」と発言をしたことを各メディアが大きく取り上げた。若手最有力の首相候補に黄信号がともり始めたのか。
「実際、いつもあんな感じの会見でしたよ。今さら感は漂いますね。確かに、今回はポエムと言われても仕方がないような気もしますが、廃炉や除染廃棄物の件でこれまで進次郎さんが具体的な話に踏み込んだことなんてあったかな、という感じです。いつもずれたことを言って、編集作業でここぞというワンフレーズを抜き出してニュースにしていました」
福島県での会見を見た地元テレビ局関係者は語る。
問題の17日の会見では、記者が次のように質問したという。
「2045年3月までに県外で最終処分をすることは大きな課題ですが、その最終処分場の検討が進んでいません。現状や見通しについて見解をいただきたい」
福島第1原発が立地する同県双葉、大熊両町に整備が進む除染廃棄物の「中間貯蔵施設」。将来的に除染廃棄物をどこに持って行くのかは福島県民だけではなく、国民全体が関心のある問題だ。それに対して、進次郎氏は次のように回答した。
30年後の自分は何歳かな
「私の中で30年後を考えた時に、30年後の自分は何歳かなと発災直後から考えていました。だからこそ私は健康でいられれば、30年後の約束を守れるかどうかという、そこの節目を見届けることが、私はできる可能性のある政治家だと思います(中略)だからこそ果たせる責任もあると思う」
そして突然、進次郎氏は自身が旗振り役を務める「ふたばの教育復興応援団」が推し進めて開設した「県立ふたば未来学園」(同県広野町)の話題に急転換した。
「ふたば未来学園についてもその思いがなければ取り組んでいません。教育というのは、一過性の支援ではできません。生徒たちが社会に羽ばたいた後の人生も含めて、責任を負うんだという思いがあるからこそ取り組んできました。この30年の約束もその思いで、ライフワークだと言ってきたことをしっかり形にするために全力を尽くしたい」
これに対して、ネット上では「何を言っているのかわからない」「ポエムのようだ」などと批判が殺到した。
こうした発言に前出のテレビ局関係者はため息をつく。
「中高一貫校計画のある県立ふたば未来学園の設立にあたっては、進次郎さんご自身が思っているほど、被災地全体が大歓迎だったわけではありません。そもそも避難地域には既存の中学校や高校があり、避難先で懸命に運営していました。そちらを支援せずに、なぜ新設するのか。確かに子供たちの選択肢が増えるのは悪いことではないと思いますが、それと除染廃棄物の最終処分に何の関係があるのかわかりません」
飲み食いしないと話が進まないのが地方
進次郎氏は11年3月の東日本大震災以降、足しげく被災地に通っている。自民党の青年局長だった12年には被災地を巡回する「TEAM-11」を発足。13年には復興政務官に就任した。以降、中間貯蔵施設の用地取得をめぐる石原伸晃元環境相の「最後は金目でしょ」発言など、政府の被災地に対する失策や失言があるたびに、福島県などで謝罪行脚を行い、各地で「もっと被災地に寄り添った政治が必要だ」と訴えてきた。
その流れは今回も変わっていない。原田義昭前環境相が福島第1原発の処理水をめぐり「放出しかない」と発言したことに関し、進次郎氏は13日の会見でも次のように述べた。
「小名浜(いわき市)の地元の組合長に『一緒にノドグロを食べましょう』と言った時の喜んだ顔、うれしかったですね。なので、決してそういった皆さんが再び傷付けられることはあってはならない」
この質問をした記者は環境大臣として処理水の問題にどう取り組んでいくのかを質問したのだが、進次郎氏は福島県に原田氏の発言を謝罪に行った際のエピソードを披露するのみだった。
「こういう実際に足を運ぶ姿勢を示すことに関しては、霞ヶ関でふんぞり返って言いたい放題の大臣より、被災地の好感が高かったのは確かです。どんなに緻密でしっかり政策を立案しても、現地で地元の人間と顔を突き合わせて、飲み食いしないと話が進まないのが地方だからです。
ただその分、期待値も高い。間もなく震災から10年が経つ被災地では具体的に何かが前に進むことを誰もが期待しているのです。言葉だけの応援ではなく、政治家としての手腕が試されていると感じます」(前出のテレビ局関係者)
気候問題はクールでセクシーに?
進次郎氏は22日、米ニューヨークの国連本部で開かれた環境関連会合に出席。日本での脱炭素社会の実現に向けた取り組みを紹介した。この会合の前に開かれた記者会見での次の発言が、マスコミに取りざたされた。
「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」
この発言に関して、一部マスコミは激しく批判した。元東京都知事の舛添要一氏もTwitter上で次のように主張した。
「ニューヨークでの記者会見で、小泉環境相は『気候変動のような大きな問題は楽しく、かっこ良く、セクシーであるべきだ』と発言。言語明瞭、意味不明瞭。金曜日に地球温暖化対策の実行を訴えた400万人の世界の若者は、がっかりするだろう。だから2時間前に、彼に注意する先輩が必要と私がツイートしたのである」(原文ママ)
だが、これは隣に座っていた国際連合枠組条約事務局長の女性の冗談を受けた発言で、ここだけ切り取ることが適正だったのか疑問府はつく。今回の発言に全国紙政治部記者は次のようにアドバイスする。
「一部報道が偏向しているように見えますね。ただ脇の甘い部分も多いかと思います。現地到着直後に突然、『ステーキが食べたい』と言い出してステーキハウスに行ったり、国連でのスピーチ直前にピザを堪能したり。国連の環境系会議はヴィ―ガンや牛の放牧などを問題視する過激な環境NGOが集まる場所です。ちょっとした行動が政治的な意味を持つので気を付けたほうがいいと思います。油断すると将来の首相就任に黄信号がともります」
元首相の父、純一郎氏も奇抜な行動や発言で注目を集めた。「構造改革」「民営化」「感動した」「自衛隊が行く場所が非戦闘地域だ」などの名言や迷言を残した。父からの薫陶なのか、血は争えないのか。今後の進次郎氏の具体的な政治的手腕が期待される。