日本の会社のうち、上場企業は約3,800社だと言われている。では、全体の会社の何%が上場企業なのか知っているだろうか。
上場企業サーチ「日本の各都道府県の株式会社数と上場会社数」(2020年3月調べ)によれば、99.8%が非上場会社。つまり、上場会社は0.2%だ。世の中のほとんどの会社は非上場企業となる。
上場企業は東証をはじめとした株式取引所で株式の売買が行われる。
では、非上場企業はというと、もちろん株式の売買は行われているし、「自社の株を売りたい」「この会社の株が欲しい」といった需要もある。しかし、マーケットがないので、基本は株式を売りたい人と買いたい人の当事者間同士での交渉となる。そして、ここに予想外の出来事に遭遇したりトラブルに巻き込まれる余地が生まれる。
経営コンサルタントの喜多洲山氏は著書『非上場株式を高価売却する方法』(幻冬舎刊)で、非上場企業株式を売却するために知っておくべきお役立ち情報を紹介している。
本書で喜多氏は、特に売却に難航しがちな2つの非上場株式を取り上げる。
(1)同族株式
創業者とその親戚によって株主が構成される同族会社。一般的には親戚関係者だけで持ち株比率が50%超えを占めている株式のことを指す。比率が50%を超えていれば、株主総会において取締役の専任や解任、決算の承認などが可能になり、会社を牛耳ることができる。
同族会社の場合、株主はほとんど親戚関係にあたるため、利害が一致し、他の株主が入ってくることを嫌がる傾向にあるという。そのため、同族同士以外の株式売買が困難になることが多いのだ。
(2)譲渡制限株式
譲渡制限株式とは、売買する際に取締役会または株主総会など、会社の承認が必要と定款で定められた株式のこと。この株式には二種類あり、一つは発行するすべての株を譲渡制限するもの、もう一つは一部の株式の譲渡を制限するものとなる。
この株式を発行するメリットは大きく、例えば「取締会の設置が不要になる」「監査役が不要になる」「取締役と監査役を株主に限定できる」「大株主の考えで株主を決められる」「会社の乗っ取りを防止できる」などが本書の中であげられる。
ところがこうしたメリットは、逆に大株主の自由奔放な会社経営を許してしまう温床になりかねないと喜多氏は述べる。このことから譲渡制限株式を発行する会社の取締役会または株主総会は、よほどのことがない限りは見ず知らずの第三者への株式譲渡を認めない傾向にあるという。
■売却できない上に、とてつもない額を納税させられることも…
となると、すでに非上場株式を持っている人は、その株式を保持し続けることになるのだが、ここでも問題が起こる。
本書では喜多氏が様々な事例を取り上げて解説をしている。父から相続した縁もゆかりもない会社の株式に、多額の相続税が課せられていた。配当金がゼロで持っていても意味がないのになかなか売れない。資金が欲しいために売却したいけど上手くいかない。
こうしたケースの代表的な一つである「相続」について触れよう。
●Cさん/55歳女性(無職)のケース
電子機器製造会社の創業者を父に持つCさん。10年前に父が亡くなり、会社の株式4%と投資用のアパートを相続し、配当金と投資アパートの収入で生活をしてきた。
ところが、事業を引き継いだ弟から設備投資のため、株の配当金を0にすると連絡が入る。困ったCさんは弁護士に相談し、経営状況を調査したところ黒字経営が発覚。なぜ配当金が0になるのかと交渉を始めたところ、今度は叔母が亡くなり、保持していた株式の一部を相続することになる。
相続したのは父親のときと同じ4%の株式。相続税も前回のときと同じ1,000万円だと思っていたが、税務署が出した株式の評価額はなんと2億円。配当金の40倍であり、相続税の税率も40%、つまり8,000万円を納税しなければならなくなったのだ。
同族経営ゆえに株式を売ることが困難。早く株式を売却したいという思いから弟に「買い取ってくれ」と頼むが「タダなら引き取る」と突っぱねられたCさん。八方ふさがりの状態になってしまった。
望んでもいないのに大量の株式を相続することになり、知らぬ間に数千万の納税義務が生じていた。そして株式を売却しようにも誰も買ってくれず――ということが起こりえるのが非上場株式だ。
◇
喜多氏はそうした問題に対する解決法を提示しつつ、非上場株式を換金する方法について本書を通して伝授していく。
さまざまケースが掲載されているほか、売却方法などの基礎的な情報もしっかり紹介しているので、非上場株式を持っているけれど、この株式を今後どうしようか悩んでいるという人にとっては参考になるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。