日本各地、世界で行われている年中行事、お祭り、儀式、行事、風習など、人が幸せを願う行為のすべては「おまじない」である。
そう述べるのは、『いにしえからの贈り物 お守り・厄除け・おまじない』(マーク・矢崎著、説話社刊)の著者であるマーク・矢崎氏だ。わかってはいるものの、そうはっきりと断言されると、「普段やっていたあの習慣は無駄だったのか?」という気にもなる。
■厄落とし、厄除け、厄払い…違いは?
本書では、古来続いてきた行事の歴史を紐解き、今の暮らしに役立てる知恵を紹介する。
年齢を重ねていくと気になるのが厄年。女性は33歳、男性は42歳が人生の「大厄」の年とされ、命に関わることもある人生の転機が訪れる年と言われている。
たとえば、厄年は重大な事故や病気に遭うことが多いとされる。また、年齢的にも人生の節目に当たる年なので、仕事や社会活動で大きな責任を負ったり、大きな決断や挑戦をすることが多く、人生の岐路に立つことが多い。そのため、健康面で不調が出やすいときでもある、というのが厄年についてよく言われることである。それもあって自分から何かを始めたり、冒険をしてはいけない年とされている。
そんなわけで、厄年の人は厄落とし、厄除け、厄払いなどいろいろなおまじないをするわけだが、これらの違いを知っているだろうか?
厄年の災厄を祓うことを「厄落とし」と言い、いつも身につけているものをわざと落とすことで、自分の身代わりになってもらうこと、何か大切なものを失うことで、厄年に受ける悪い出来事を先にすませてしまう、という意味がある。また、厄年の人が家族や知人に贈り物をしたり、宴席を開いてご馳走したり、ご近所を集めて餅まきをすることで、厄年の災厄をみんなに背負ってもらい小さくする。金銭的にも負担を背負うことで、悪いことを先にすませるという風習も各地に残っている。
厄落としが自分でする縁起かつぎのおまじないだとすると、仏様に祈って加持祈願をしてもらうのが「厄除け」。お大師様やお不動様のような悪を戒める仏様に祈願をして、悪事や災難を身に寄せつけないようにお願いする儀式のこと。
厄年の災厄を神様に頼ろうとするのが「厄払い」。神様の神通力でその身に宿った厄年の穢れや災厄を祓い清めようとするもの。お祓いを受けたあとは、その厄年の期間は清めた身体が再び厄で穢れないように、身を慎んで正しい行いをする必要がある。
また、厄年はもともと仏教と共に入ってきた考え方だが、ヨーロッパ各地にも厄落としのような風習が行われているという。キリスト教国のイギリスでは、男性は4のつく年、女性は7のつく年が厄年とされている。厄落としには、オークの実やオークアップルと呼ばれる虫こぶをその年の数だけ集めて、三日三晩、軒下につるす。そのあと、ご近所を集めてそのオークの実や虫こぶを庭先で燃やす。たくさんの人に見てもらうほど、厄落としの効果が強いとされている。ほかにも、トルコやスペインでも、厄落としの風習が行われている。
厄年や厄落としの考え方をはじめ、おまじないは幸せや成功を信じる強くて純粋な心なのかもしれない、とマーク・矢崎氏は述べる。普段、あまり深く考えずに参加しているかもしれない年中行事・風習・お祭りなどにもそれぞれ理由や歴史があると思うとおもしろい。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。