夏――ビジネスファッションにとって最大の試練ともいえる季節がやってきました。6月23日には沖縄地方で梅雨明けが発表され、これから各地で夏本番を迎えることになります。この時期は、スーツで働くことにしんどさを感じるビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。
そもそも、日本はスーツ発祥の地であるヨーロッパに比べて高温多湿であり、梅雨から夏にかけてはスーツ着用に不快感が高まる季節です。そのため、近年はクールビズが推奨されているわけですが、実は気づかないうちに「NGファッション」をしている可能性もあります。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。』(CCCメディアハウス)の著者でイメージコンサルタントという立場から、夏も快適に仕事をこなすためのクールビズについて考えていきたいと思います。
クールビズの「5段階」とNG行為
首都圏の多くの企業は、ゴールデンウィークを過ぎると、入口に「クールビズ対応中。軽装でご容赦ください」といった但し書きを掲示するようになりました。クールビズの基準は各企業によって違いますが、夏の服装については厳しい順に以下のようになっています。
(1)真夏でもスーツ着用
(2)ジャケット+パンツでOK
(3)ノータイ、ノージャケットでOK(シャツとスラックスでいい)
(4)ポロシャツOK
(5)なんでもあり(Tシャツでもハーフパンツでもいい)
まずは自社がどのレベルに該当するかを知り、社内ルールを守ることが大切です。そして、次に、ビジネスウェアは仕事の服装である以上、「パジャマのように楽さや快適さだけを追求するわけにはいかない」ということも意識しましょう。
たとえば、社内のルールが(3)(4)(5)で普段はラフな格好がOKでも、客先、特に初対面の客先に行く日は(2)まで上げるのが無難です。そもそも、下が「ハーフパンツOK」という職場は日本ではまだ少なく、多くのビジネスパーソンはフルレングスのスラックスで勤務していると思います。そのため、夏用のジャケットを1着買っておいて、何かあるときはそれを羽織ればいいのです。
半袖シャツ+ジャケットは絶対NG?
ここで気をつけたいのが、「半袖のワイシャツやポロシャツの上に長袖のジャケットを着るのは絶対NG」ということです。本来、腕をだらんと脱力させた状態で「ジャケットの袖の先からシャツの袖が1cmほど見えている」というのが、ワイシャツとジャケットの長さの正しい関係です。したがって、長袖ジャケットに半袖シャツやポロシャツを合わせるのは、そもそも「あり得ない」のです。
まず、ジャケットの袖の先からシャツの袖が見えていないと、見ためで不潔な印象を与えてしまいます。また、半袖のワイシャツでは皮膚の汚れがジャケットに直接ついてしまうため、実際に不潔です。
最近では、若手を中心に「俺はネクタイなんかに縛られない、自由なノマドワーカー。スタバにマックを持ちこんでラテ1杯で4時間は居座るぜ」的な、ジャケットの下にワイシャツではなくTシャツを着用するビジネスパーソン(経営者も含めて)を見かけるようになりました。しかし、こういった人のジャケットは、前述の理由から袖がかなり汚れているはずです。
袖だけでなく、Tシャツの場合はワイシャツと違って「襟」がないので、ジャケットの襟の部分にも汚れが直接ついてしまいます。襟の汚れはかなり目立つので、ひどくなると人前でジャケットを脱ぎづらくなりかねません。
夏の革靴、「ムレて不快」問題の解決策
夏のビジネスパーソンの大問題が「靴」です。暑さと湿気でムレて不快なだけでなく、放置していると、においや水虫といった二次被害も懸念されます。多くの働く男性たちが「夏に革靴で歩くのはキツい」と困っていることでしょう。しかし、逆に考えれば、そんなビジネスチャンスを靴のメーカーなどが放っておくでしょうか。
当然、各社とも努力をしています。たとえば、リーガルは「エアローテーションシステム」という、歩行により空気を靴底から靴内に送り込み、循環させる仕組みを独自に開発しています。
また、ホーキンスの「INFINITY COOL」は、裏を見るとリーガルのものよりも「通風」感があります。「通気性ビジネスシューズ INFINITY COOL|HAWKINS ホーキンス」(ABC-MARTオンラインストア)より
ただ、ビジネスファッションの鉄則である「よけいなところで目立たない」「ノイズを立てない」という観点から見ると、「INFINITY COOL」の裏は「若干、目立つかな」とも感じます。
しかし、「裏だし、別にいい。そんなことより、とにかく暑いのをなんとかしたい」という人もいることでしょう。そうした人にとっては、「INFINITY COOL」の通風感は大きな助けになるはずです。
以前、私は紳士服販売の仕事をしていましたが、製造・販売の現場では「暑い・ムレる」問題への対策は毎年行われていて、各商品は地道に進化を続けています。靴に限らず、スーツでも、吸汗速乾性に優れた素材「クールマックス」を用いたものなど、夏用の商品があるのです。
しかし、それらがいまひとつ「消費者に伝わっていない」というもどかしさを感じていました。前述したリーガルやホーキンスの商品、クールマックスのスーツなども、知らない人が多かったのではないでしょうか。紳士服販売店などで「とにかく暑いから、なんとかしてくれ」と意思表示をすれば、改善法は意外と簡単に見つかるものです。しかし、販売員を前にすると口を開けなくなる人も多いものです。気持ちはわかりますが、ぜひ勇気を出して聞いてみてください。
また、靴もスーツも基本は「中2日」です。制服のように毎日同じ服を着る、同じ靴を履く……というのは、本来は絶対にやってはいけません。高校野球の投手が真夏に連投して体調に異常をきたしてしまうように、スーツや靴も休ませずに着たり履いたりし続ければ、においやしわがとれなくなってしまいます。また、靴や服の中は乾かずにムレたままです。いくら夏用の靴やスーツを買ったからといっても、それを毎日着用していてはメーカーが想定しているような効果は得られないでしょう。
「夏用」「暑さ対策」をうたう靴や服に投資し、着用ルールを守る。そうすれば、今年の夏は去年より快適に過ごすことができ、仕事もはかどるかもしれません。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!