メンバーが生き生きと活躍できる働きやすい職場があれば、疲弊してしまいメンタルの調子を落としてしまいやすい職場もある。
その違いは様々な要因によってもたらされる。たとえば、企業風土の違いが大きな要因の一つになっているかもしれないし、メンバーと会社の方針がミスマッチしているという可能性もある。
しかし、生き生きとした組織文化を阻む「リスク」は共通してあるものだ。
『職場のウェルビーイングを高める 1億人のデータが導く「しなやかなチーム」の共通項』(ジム・クリフトン、ジム・ハーター著、古屋博子訳、日経BP 日本経済新聞出版刊)では、避けるべき4つのリスクを挙げている。
1.従業員のメンタルヘルス
2.明確さと目的の欠如
3.指針、プログラム、特典への過度の依存
4.スキルの浅いマネジャー
では、それぞれどのようなリスクなのか少しずつ見ていこう。
従業員のメンタルヘルス
「ウェルビーイング」とは、一言でいうならば「生き生きとした」状態であるということ。このウェルビーイングが高まることは人生や仕事のパフォーマンス向上にもつながる。
そして、職場のウェルビーイング向上を妨げる1つめのリスクが「メンタルヘルス」だ。組織は、従業員のメンタルヘルスに関心を払う必要がある。社会情勢が不安であればなおさらのことである。
明確さと目的の欠如
本書によれば、米国の従業員のうち「自分の会社の経営陣は、明確な方向性を持っている」ことに強く同意する人は22%しかいないという。リーダーたちはもしかしたら、自分の会社の価値観や社訓、経営理念やビジョンはちゃんと伝わっていると勘違いしているかもしれない。しかし、いくらそれを伝えているつもりでも、受け入れてもらわなければ組織は強くならない。
従業員が自社のリーダーシップ(経営層)を信頼できていない組織は失敗に向かいやすい。そして彼らはどんどんと会社から離れていってしまう。これは大きなリスクである。
指針、プログラム、特典への過度の依存
仕事の進め方の指針や、スキルや規範を従業員に教えるプログラム、ウェルビーイングを高めるための特典はすべての組織に必要だが、リーダーの中には、充実度を向上させるための解決策と誤認している人がいるという。
仮に善意に基づいてプログラムを提供しても、それが従業員のウェルビーイングにつながる保証はない。指針やプログラムに過度に依存をしていけないのだ。
スキルの浅いマネジャー
この4つのリスクのうちの最大のリスクがこれだ。
マネジャーは従業員のエンゲージメントとパフォーマンスを左右する、唯一であり最大の要素である。有意義なフィードバックを頻繁に行えるマネジャーであれば、完全リモートでも対面のチームのエンゲージメントを大幅に上回ることが可能だ。
しかし、スキルの浅いマネジャーは、フィードバックが目的としている「単なる修正やアドバイスを与えるのではなく、相手がそれに感化されて意欲が沸いてくる」という結果を理解していないことが多い。そうなると、エンゲージメントもウェルビーイングも生み出せない。著者たちは「職場づくりを主導するのは、マネジャーなのです」とまとめている。
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新型コロナウイルスのパンデミックは私たちの環境を一変とした。個人や健康や生活に大きな影響を与えただけでなく、その影響は経済や社会をも呑み込んだ。働き方が変わり、強いストレスを感じたり、精神的に疲弊してしまった人も多い。
そうした中で、生き生きとした組織文化を作り、活性化させるにはどうすればいいのか。本書では、そのためのリーダーの心得を学ぶことができる。リーダーからマネジャーまで、組織を引っ張る立場にある人にとってのヒントが詰まった一冊だ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。