30代で貧弱な経験と知の蓄積しかないと、重要な40代で大きな損失&失敗が待ち受ける
「知の交差点」を作ることで可能性は広がる
そこで必要となるのが知の融合、すなわち「Combination」だ。自分なりの核や確信として蓄えた知(信念、ビジョン、仮説、ノウハウ、スキルなど)を抱え込むのではなく、他の分野との「知の交差点」を作り、融合してより大きく発展させることで、イノベーティブなテーマを設定することができる。逆にいえば、30代までの豊かな暗黙知の蓄積と、形成した強い問題意識や価値観があってこそ、40代で人々の共感を得たり、仲間を惹きつけることができるのである。30代までに軟弱な基盤しかなければ、40代になっても他者を惹きつけることはできない。
例えば、マーケティングの分野で広告やイベント、ブランディングやCRM(顧客関係管理)などのノウハウを積み重ね、自分なりの知の体系を形式知化していれば、30代の時点で社内ではそれなりの地位になっているはずだ。そして、それをベースにしていけば、その後も仕事はうまく回るだろう。しかし、ビッグデータ、データサイエンス、IoT(モノのインターネット)が発展し、分析・統計重視の時代になったら、そのまま安住していられるだろうか?
また、ビジネスモデルイノベーションの時代になり、事業ドメインや戦略が変化すれば、知見が不足してしまうのは明らかだ。そのため、マーケティングのプロであっても、データサイエンス、ビジネスモデルイノベーションなどと「知の交差点」を模索していく必要がある。
知を貪欲に広げて「Combination」を進めていかなくては、大きな知の創造はできない。逆に考えれば、他者も知のつながりを求めているので、自分のノウハウを生かせるチャンスは多く存在する。知の双方向性が成立する時代になっているのなら、その環境を活用しない手はないだろう。
そのためには、やはり自らきっかけを作っていく必要がある。MBAや研究会などの社外活動に参加したり、書籍の著者やセミナーの講演者にアタックしたり……。「誰もがパートナーを探している」と信じて動き出すことが、「Combination」の第一歩となる。
次回連載では、50代で重要なSECIの「I」、つまり「Internalization」(内面化)について考えたい。
(文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長)