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徳岡晃一郎「世代を超えたイノベーションのために」(4月28日)

30代で貧弱な経験と知の蓄積しかないと、重要な40代で大きな損失&失敗が待ち受ける

文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

「知の交差点」を作ることで可能性は広がる

 そこで必要となるのが知の融合、すなわち「Combination」だ。自分なりの核や確信として蓄えた知(信念、ビジョン、仮説、ノウハウ、スキルなど)を抱え込むのではなく、他の分野との「知の交差点」を作り、融合してより大きく発展させることで、イノベーティブなテーマを設定することができる。逆にいえば、30代までの豊かな暗黙知の蓄積と、形成した強い問題意識や価値観があってこそ、40代で人々の共感を得たり、仲間を惹きつけることができるのである。30代までに軟弱な基盤しかなければ、40代になっても他者を惹きつけることはできない。

 例えば、マーケティングの分野で広告やイベント、ブランディングやCRM(顧客関係管理)などのノウハウを積み重ね、自分なりの知の体系を形式知化していれば、30代の時点で社内ではそれなりの地位になっているはずだ。そして、それをベースにしていけば、その後も仕事はうまく回るだろう。しかし、ビッグデータ、データサイエンス、IoT(モノのインターネット)が発展し、分析・統計重視の時代になったら、そのまま安住していられるだろうか?

 また、ビジネスモデルイノベーションの時代になり、事業ドメインや戦略が変化すれば、知見が不足してしまうのは明らかだ。そのため、マーケティングのプロであっても、データサイエンス、ビジネスモデルイノベーションなどと「知の交差点」を模索していく必要がある。

 知を貪欲に広げて「Combination」を進めていかなくては、大きな知の創造はできない。逆に考えれば、他者も知のつながりを求めているので、自分のノウハウを生かせるチャンスは多く存在する。知の双方向性が成立する時代になっているのなら、その環境を活用しない手はないだろう。

 そのためには、やはり自らきっかけを作っていく必要がある。MBAや研究会などの社外活動に参加したり、書籍の著者やセミナーの講演者にアタックしたり……。「誰もがパートナーを探している」と信じて動き出すことが、「Combination」の第一歩となる。

 次回連載では、50代で重要なSECIの「I」、つまり「Internalization」(内面化)について考えたい。
(文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長)

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

ライフシフトCEO
多摩大学大学院教授、研究科長、フライシュマンヒラード・ジャパン シニア・ヴァイス・プレジデント、多摩大学社会的投資研究所所長

1957年生まれ。東京大学教養学部卒業。オックスフォード大学経営学修士。日産自動車人事部、欧州日産を経て、99年フライシュマン・ヒラード・ジャパンに入社。人事およびコミュニケーション、企業文化、リーダーシップなどに関するコンサルティング・研修に従事。2014年より多摩大学大学院研究科長、2017年ライフシフトを設立、CEOに就任。主な著書に『MBB:「思い」のマネジメント』(共著、東洋経済新報社)『未来を構想し、現実を変えていく イノベーターシップ』(東洋経済新報社)、『人事異動』(新潮社)、『ミドルの対話型勉強法』(ダイヤモンド社)、『人工知能Xビッグデータが「人事」を変える』(共著、朝日新聞出版社)、『しがらみ経営』(共著、日本経済新聞出版社)など他多数。
株式会社ライフシフト

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