日本国債暴落で大儲け狙う世界の投資家たち…アベノミクスで高まる、財政破綻懸念の声
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その財政健全化目標については、「国と地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を2015年度までに10年度に比べ、赤字の対GDP(国内総生産)比で半減、20年度までに黒字化を達成、その後の債務残高の対GDP比の安定的な引き下げを目指す」という前民主党政権が10年に対外公約した政府目標を踏襲した。
プライマリー・バランスとは、国の歳入の中核をなす税収と税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の支払い)を除いた歳出とのバランスを指す。つまり、国債を発行して調達する資金(歳入)と国債に関連した支払(歳出)を除く、国の純粋な収入(歳入)と支出(歳出)のバランスのこと。
具体的な財政健全化の道筋は、8月上旬に策定する「中期財政計画」で示すとしている。内閣府の試算では、15年度の財政健全化目標を達成するためには、(1)消費税を14年には8%に、15年には10%に引き上げ(2)補正予算の編成を行わない(3)高齢化に伴う社会保障の自然増を抑制するとともに、他の政策経費(国が執行する具体的な政策に使われる経費で、国債費は除かれる)の削減により、政策経費を全体として前年度並みの水準(13年度当初予算で70.4兆円)に保つ(4)その上で、5兆円分の収支改善を図る―必要があるとしている。
6月17、18日に開催された英国・北アイルランドのロックアーンでのG8(先進8カ国)首脳会議の首脳宣言には「日本は信頼できる中期的な財政計画を定めるという課題に応える必要がある」と盛り込まれ、日本は名指しで「財政健全化」の実行を指摘された。特に、ドイツのメルケル首相からは、一般政府債務残高が対名目GDP比で200%を超えた最悪の財政状態に対して、大きな懸念が示された。
安倍政権が目指す財政健全化は、前民主党政権の目標としたプライマリー・バランスの黒字化を中心としたもの。13年度の国・地方のプライマリー・バランスが約37兆円の赤字見込みであることからも、目標達成はほとんど困難なのは明らかだ。
さらに、プライマリー・バランスの黒字化は、メルケル首相が懸念する政府債務残高の削減に直結するものではない。政府の歳入と歳出が黒字化しても、膨大に積み上がった国債の発行残高は減少しない。今や、先進国では財政健全化を示すのはプライマリー・バランスの黒字化ではなく、政府財務残高の削減=国債発行残高の減少を目指すのが常識なのだ。
しかし、安倍政権では国債発行に歯止めはかけず、黒田東彦日銀総裁の“異次元緩和”の下で未曾有の金融緩和を続けている。13年に日銀は90兆円程度の長期国債を買い入れる予定だが、それは13年度の新規国債発行予定額(約43兆円)の約2倍、借換債を含む長期国債発行予定額の約7割にも上る。
こうした状況は、事実上の日銀による「財政ファイナンス」との疑念を抱かせることになる。安倍政権が着実な財政健全化を進めることができなければ、市場は日本国債への信認を低下させることになるだろう。その結果、国債の価格が下落し、利回り(長期金利)が上昇し、国債の利払い費が増大することで、財政が一段と悪化し、財政運営が苦境に立たされ、財政健全化が頓挫する可能性は大きい。
世界の投機家は、先進国で最悪の財政状況にある日本に対して、どのタイミングで日本国債を売り崩し、大儲けをしようかと虎視眈眈と狙っている。CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、その金融商品の発行体が破綻して債務不履行となった場合に、それを補填する保険のような取引だが、日本国債のCDSは、08年末には592位だったが、10年末には50位に上昇、12年末には10位と、破綻リスクの高まりを裏付けるように順位が上昇している。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)