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【5】中国とネットワークが鍵!? SCEがソニーの"救世主"となる理由

【検証】プレステ、PSNで、ソニーの業績回復なるか?

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「SCEA(SCEアジア法人)のプレジデント・安田哲彦氏がリーダーシップを取り、香港、台湾などのサードパーティにPS3やPSPなどの開発ツールを提供したり、地元の行政や大学と連携して前述のツールを用いたゲーム開発教育を積極的に行っています。SCEアメリカや、SCEヨーロッパが欧米ですでにある程度成功を収めているように、現地のソフト開発スタジオを支援し、連携できれば、世界各地のニーズに合ったタイトルをタイムリーにリリースできるようになりますから。今年2月に発表された中国政府の5カ年計画では、ゲームが重要産業のひとつに加わっています。中国では今まで、オンラインゲームのプレイ時間に対する規制など、ゲーム産業に厳しい措置が取られてきましたが、これにより、優遇政策への舵取りが行われる可能性が見えてきました。中国圏市場でのブランド浸透というのは、確実に視野に入っているでしょうね」(中村氏)

 さらにSCEに希望を見いだす上で最も重要なのが、こうしたゲーム事業の副産物として、自社のネットワークを構築している点だ。PS3など現在のPSブランドは、基本的に「PlayStationNetwork(以下、PSN)」という独自のオンラインコミュニティにつながっており、11年4月の時点で7700万ものアカウントが登録されている。

 こうしたネットワークはゲームメーカーとしては珍しいものでなく、現時点でゲーム事業を支えるほどの収益を上げているともいえない。しかし、ハードウェアメーカーが持つネットワークとして考えると、異例のものといえるのだ。アップルがiPodやiPhoneのヒットで、単なるハードウェアメーカーとしてではなく、iTunesというプラットフォームを通じてコンテンツ配信企業へと変貌したように、PSNはソニーを単なるハードウェアメーカーからコンテンツ配信と融合した企業へと変革させる可能性を秘めている。

 中村氏は「PS2の時代は、ネットワークとサービスやコミュニティの融合は現実と理想像に乖離が生じていたが、現在は違う。コンテンツとコミュニティがより重要になってくる状況では、PSNのユーザーはソニーグループの唯一無二の資産といえるでしょう。グループ全体としてこのユーザーに継続的な感動体験を提供できるかが、これからの成否を握っている」と、PSNが持つ価値に期待を示す。

他社製品とつながれるのはPSブランドだけ

 このように、SCE単体として見ると現時点で”ソニーの救世主”になるとは思えないが、SCEが構築したPSNは、ソニー本体と組み合わせることで真価を発揮する可能性を秘めている。PSNを中心にしたコンテンツとハードの一体化は、ゲームだけでなくテレビやPC、スマートフォンなどと連携することで、ソニーを変革させる原動力となり得るだろう。

 しかし、ここで問題になってくるのが、ソニーの社内事情だ。PSNを中心とした製品展開を実現するためには、エレクトロニクス分野とゲーム事業間の高度な連携が求められる。平井氏も会見で「OneSony」を掲げ、グループの一体化を強調しているが、さまざまな製品部門を抱えるソニーは、やはり一枚岩とはいえない。

 あるSCE社員は社内的な認識について、以下のように語る。

「ソニーとSCEは、会社として組織も予算も別ですし、グループ内の交流が盛んなわけでもないです。そもそもSCEでも企画・開発、マーケティング、コンテンツ制作の部門が分かれていて、青山に会社があった頃は勤務スペースもバラバラ。品川に移転してからは同じスペースにいますが、交流が増えたようには見えません」

 もちろん平井氏がソニーのトップに立ったことで、こうした状況を改革する意図はあるだろう。しかし、前出の平林氏は、ソニーに変革をもたらすとしたら株主や役員の思惑に左右される経営方針ではなく、製品ではないかと話す。

「7月に発売される『ナスネ』が、ソニーの改革を象徴しているように思えます。これは、デジタルチューナー内蔵のネットワークメディアサーバーで、テレビ番組を録画してPS3やXperiaなどで視聴できるとうたっています。もちろんこの製品がいきなりソニー全体を救うほど売れるということはないでしょう。ですが、ナスネはゲーム機、テレビ、スマホ、PCといったソニーの製品群をつなぐもの。ソニーの製品群がどう連携していけばいいかというビジョンを見せる先駆け的な製品だと思います。こういう製品こそが結果的に今後のソニー全体の経営デザインを提示して、組織を変えていく可能性がある」(平林氏)

BusinessJournal編集部

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