どこにあるんだっけ…(「週刊ダイヤモンド」
<ダイヤモンド社/2月11日号>より)
4月12日、ソニー本社(品川)で開かれた経営説明会の冒頭。「ソニーが変わるには今しかない」。平井社長兼最高経営責任者(CEO)は参加者に熱く語りかけた。その2日前に業績修正で巨額赤字を急遽発表したばかりなだけに、注目を集めたが、参加したアナリストは「中身はまったくなく、平井社長のしゃべりのうまさだけが上滑りしていた」と漏らす。
ソニーの喫緊の課題は2つ。8期連続で赤字を垂れ流すテレビ事業の構造改革をいかに進めるか。そしてテレビ依存度を減らし、スマートフォン(高機能携帯電話)などのモバイル分野やゲーム分野をいかに伸ばすかだ。
だが、説明会当日は、具体的な方策は示されずじまい。「2014年度の売上高は11年度見通しの3割増となる8兆5000億円。そのうち6兆がエレクトロニクス部門」など、かたちだけの目標数字がむなしく並んだ。
別のアナリストは、「最大の課題であるテレビ事業では、シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と資本・業務提携したように、抜本的な解決策を示すことが期待された。しかしふたを開けてみたら、モデルラインナップ数の削減などチマチマした話ばかりで拍子抜けした」と振り返る。
説明会の数日後、ソニーは台湾液晶大手・AUO(友達光電)と次世代超薄型ディスプレーである有機ELの共同開発を検討しているという報道が飛び出したが、この分野は韓国・サムスン電子が先行する領域。付加価値が高い分野に乗り出しても、「テレビ事業が全社に占める割合が大幅に減ることはない」(平井社長)のでは、たたき売り状態のテレビ事業をリカバリーする抜本的な止血策にはなりえない。公言する14年3月期の同事業黒字化にも黄色信号がともる。
テレビ事業以上に深刻なのは、成長戦略の不在だ。そもそも「ソニー再生」への期待がかかる平井氏が社長に抜てきされた理由は、「経営力」ではなく、「英語力」と冗談交じりに社内外で語られる。「幹部陣で、前社長兼CEO、ハワード・ストリンガー氏が英語で飛ばす冗談で笑えるのは平井さんだけだった、という笑えない話も多い」(ソニー社員)。ネイティブより達者といわれる英語力と米国仕込みのプレゼンテーション能力で、米国社交界でパイプをつくり、出世の階段を一気に駆け上がってきたのが実情だ。当然、経営戦略もストリンガー路線の延長線上にある。
そして、ストリンガー時代末期に打ち出した、”次世代”ソニーを支えるビジネスモデルが、ネットワークサービスを軸とした「4スクリーン戦略」だ。