FC急展開中! 全国で大人気・「缶詰バー」に学ぶべきこと
(「クリーン・ブラザーズHP」より)
現代美術作家・川端嘉人さんは、私が神戸製鋼デュッセルドルフ事務所長としてドイツに駐在していた、1995年からの友人だ。彼は、大阪の現代美術トリエンナーレデュッセルドルフ賞を受賞後に美術留学してきたのだ。
同氏は美術家であると同時に、ビルメンテナンス会社・クリーン・ブラザーズの会長という顔も持つ。99年大阪道頓堀の住友倉庫を使用し、現代美術中心の制作と展示の場を提供する「SUMISO」を開設。その運営には、美術作家を志す学生や美大卒業生も参加し、労務提供の代わりにスペースを借り、その場での作品制作や展示ができるという、アーティスト養成という目的も兼ねていた。
具体的には、倉庫の2階が制作場所と展示場となっていて、1階の倉庫スペースを清掃した若者はここで制作し、そのまま発表できるのである。若い美術家は、そもそも制作できるスペースを確保することが困難で、大きな作品をつくり、発表するにも場所がないのだ。まだ無名の作家の卵か蛹なので、画廊は相手にしてくれず、かといって、どこかに展示しなければ見てもらえないという課題を抱えていたのだ。
川端さんは、そんな若者たちに希望とチャンスを与え続けているのである。これが、清掃事業を行う芸術家集団「クリーン・ブラザーズ」である。
私は、デュッセルドルフ時代からお付き合いしていたし、もともと川端さんの志に共感を覚えていたので、PR顧問契約は結んでいなかったが、なんらかのかたちで支援したかった。そこで、この試みを友人の大阪産経新聞記者に話すと、とても興味を示し、大きな囲み記事として掲載された。そのインパクトにより、メディアでの露出が増えた。しかし、川端さんはプレスリリースを配信したことは一度もなく、すべて担当記者への個別取材要請や、記者からの取材依頼なのだ。
次に2002年7月、川端さんは道頓堀川のほとりにある、ほかに使えないような50坪余りのスペース(缶詰倉庫)に、缶詰バー「mr.kanso(カンソ)」をオープンした。
口コミ+メディアへの個別接触で、増殖効果を生み出せ!
当初、川端さんは飲食店を始める気持ちはまったくなかったが、住友倉庫より「橋のたもとの小さなスペースを何かに使えないか? もし使えるなら自由に使ってもらっていい」との相談を受けた。そこで彼は缶詰バーを思いついた。ドラム缶のテーブルに缶を並べて、ビールを飲むというものだ。これが実際にやってみると、なんともおしゃれなのだ。彼は、これを自社のビジネスの柱のひとつとして育てていけないか? との淡い期待を抱いたのである。
世界各国から集めた約150種類のお国柄を表すような缶詰が見事に陳列され、それをつまみにドラム缶のテーブルで酒が飲める。缶詰1個200円、ビール1杯350円という安さと気軽さが若者の心を掴み、口コミで一挙に話題になった。この頃になるとメディアのほうから、伝え聞いて取材申し込みが増えており、特別なアクションを取らなくても、関西ではいろんなところに紹介されるようになっていった。
さらに火を点けたのは、同年8月5日に大きな写真付きで掲載された、朝日新聞朝刊「2002年大阪発見」欄の「川風に吹かれて…缶詰バー」という見出しの記事だ。これも、「大阪発見」という特集にぴったりのテーマということで、同紙記者からの取材申し込みである。
ある程度露出し、飽和点に達するとひとりでに拡散拡大していくのが、メディアの特長でもある。それにこちらからの個別取材要請を組み合わせることによって、PR力は増幅するのである。私は川端さんに、どんなメディアが来ても、喜んで取材に応じて、とにかく小さくとも記事になるようにアドバイスした。小さなメディアの記者でも小さな記事でも大切にすることが、露出が増幅する秘訣なのである。普通それに気づかないものだ。
さて、手頃な値段でおしゃれな雰囲気が味わえる、この独創的アイデアが若者へ与えたインパクトは強く、一般紙、食関係の業界紙(誌)や雑誌、夕刊紙など、あらゆるメディアへの露出につながっていく。
1対1のPR活動で、FC展開加速!
さらに川端さんは、日経新聞記者にアプローチしてFC展開の構想を1対1で話したところ、日経MJ新聞に「缶詰バーFC全国展開 クリーン・ブラザーズ3年後に50店」という3段抜き記事で掲載された。大阪で生まれた「mr.kanso」をFC方式で全国に広げ、地方の活性化にも一役買おうという内容だ。8坪と開設費300万円あれば、調理等の経験がなくとも、誰でもオーナーになれるビジネスモデルなのだ。