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ユーザーのネガティブな書き込みで溢れた口コミサイトは突然閉鎖!?

楽天「kobo」大不評に見る、電子書籍成功のヒント?

文=エースラッシュ
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楽天「kobo」大不評に見る、電子書籍成功のヒント?の画像18月5日付日経新聞より
 楽天の電子書籍端末「kobo Touch」が発売された。発売直後から大変話題になっているが、その内容の大半は悪評だ。

 「初期設定が完了できない」
 「まともに動かない」
 「使えはするものの使いづらい」
 「サポートがなっていない」

 そんな声が方々で渦巻いている。発売から数日で大きな問題は解決されたようだが、まずどういう問題だったのかをさらってみよう。

 大きな問題は「購入したもののアクティベーション(初期設定)ができなかった」というものだ。ほかにも、

 「入手した書籍の内容がおかしい」
 「動きがおかしい」

という話があったが、これらの問題はすべて同じ原因から起こっていたようだ。「ITmedia」に掲載された同社担当執行役員のインタビュー(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1207/25/news106.html)によると、初回接続時にダウンロードさせるソフトウェアが不完全なまま出回ってしまったのだという。

 もちろん、それだけが原因ではない。Windowsのユーザー名やファイル名に日本語を使う人がいる可能性を見落としたのは、ミスとしかいいようがない。発表当初、3万冊でスタートするといっていた日本語書籍は半分程度しか用意されておらず、しかも1万冊程度は無料で公開されていて、誰でも読める「青空文庫」だった、という裏切りもあった。その「青空文庫」ですら、表紙がすべて「青空文庫」になっていて開いてみないと中身がわからないという、誰がこれでよしとしたのだろうかと首をひねるような仕様にもなっていた。

 本体の基本ソフトは、すでに修正されている。書籍数も徐々に増えてはいるようだ。いろいろな使いづらい部分も今後は改善されていくと考えられる。今後どうなっていくのかは、見守っていきたいところだ。

大量の不満レビューから見えてくる「一般層」ユーザー

 今回の騒動で意外だったのは、荒れに荒れた楽天レビューや各種SNSコメント等の中に、あまりこの手の端末やサービスに詳しくなさそうなコメントが目立ったことだ。

 例えば、

 「ページ切り替え時に白黒がちらちらする」
 「前ページの残像のようなものが残る」

というコメントがあったが、これはE Inkの一般的な特性だ。基本的に1ページを比較的長めに表示して読む書籍用のものなので、マンガのようにコントラストの強いコンテンツを高速でページ移動する読み方には、あまり向いていない。「暗い部屋で読めない」というのもE Ink端末としては当たり前だ。

 さまざまな苦情の中に、明らかに端末本体や楽天側に問題があると感じられるものと、ユーザー自身の知識不足や勘違いが含まれているものがごちゃ混ぜになっていた。スペック表の読み落としもあれば、楽天側の公表情報に不足があった部分もある。知識がないのが悪いわけではない。そういう、ごく普通の層がユーザーになったことが驚きだったのだ。

 日本では、専用端末での電子書籍利用は、かけ声ばかりが大きい状況だ。実際に手にとったことがある人はまだ少数だろう。そして、そうした少数の人々は特別に興味を持っている層で、電子書籍端末といえば、たいていは白黒表示のE Ink採用だということも、E Inkがどういう動きをするものなのかも知っている。そういう層だけが手にとったのならば、こういう苦情は出ない。

 つまり、楽天で販売されているほかの家電等と同じく、どこか的外れなレビューもたくさんあるという状況は、これまで電子書籍端末に触れてこなかった一般ユーザーを振り向かせることができたということではないだろうか。

今後の端末&サービス開発のヒントになる?

 それだけ一般層に売れた理由は2つ考えられる。

 まず、なによりも価格だ。税込、送料無料の定価が7980円。さらに楽天では、ユーザーの会員ランクごとにポイントバックキャンペーンを実施した。プラチナ会員だと、実質5000円で「kobo Touch」が購入できたのだ。

 もう1つの理由は、告知力と楽天というプラットフォームでの販売だ。テレビCMまで行って発売を告知したが、楽天でプラチナ会員になるほど買い物をしている人々なら、普段の買い物中に発売前告知を目にすることも多かったはずだ。しかも、その場でクリックしてゆけば予約できてしまうという手軽さは衝動買いを誘う。

 5000〜8000円程度で、気軽に購入できる窓口があれば、ふんわりとしたイメージ広告だけでも購入につなげることはできるという実績だ。コンテンツ数などにも他社サービスに比べて魅力的な部分はなかったが、それでも売れた。今の一般ユーザーはこの程度の価格ならば買ってくれるととるか、ここまで価格を下げなければ売れないととるかという問題はあるが、1つのわかりやすい指標になるだろう。

 また、そうして購入したユーザーがどういうイメージを持っているのか、どんなサポートを求めているのかが読み取れるのが、「kobo Touch」に関するレビューだった。

 「アクティベートにPCを使うのは面倒」
 「フォルダ名やユーザー名に日本語が使えないとは想像もしなかった」

という、ある意味マニア層からは出てこないコメントは、製品・サービスづくりにも役立ちそうだ。東洋経済オンラインの記事(http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/4497ab666f3b559b88a3962aaa795a96/)によれば三木谷氏はネガティブなレビューを誤情報として削除したがっているようだが、業界成長のためにもぜひ、取捨選択などせずレビューはすべて公開してほしい。
(文=エースラッシュ)

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